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鋼鉄島・後編 暗黒の残響

 ミアに起こされた。

「ばーか。さっさと起きろ。」

 鉱山に来ていた。クルハが本を抱えてこちらを見ていた。俺は起き上がって言った。

「ブロンドとコルクは⁉︎」

 ミアにぶっ叩かれた。

「それよりも私たちがいることに驚きなよ!」

「あ…。え⁉︎ミア⁉︎クルハ⁉︎」

「今かよ…。」

 ルミーも呆れていた。

「ブロンドさんとコルクさんは『烈火の悪魔』でしたっけ?にボコボコにされて…。」

「それで?」

「ここにいます。」

 紐で縛られたブロンドとコルクが鉱山の入り口に置かれていた。

「うわーん!助けてー!」

「諦めなさいコルク。生かしてもらってるだけで十分ですよ。」

「どうすんのこいつら?」

 ミアが冷酷に言った。

「殺せばいいじゃん。」

 残酷すぎだろ。それに対してクルハは平和なひとことを言った。

「仲間になればいいじゃないですか。」

 俺、ミア、ルミー、クルハ、タリタ、ブロンド、コルク…。七人の編成だ。少し多いかもしれないが殺すのよりはよっぽどマシだ。

「はー?こんな奴らとか仲間?嫌d…。」

 ブロンドがコルクを遮って言った。

「本当にありがとうございます!」

 ブロンドはコルクの世話係のようだ。改めて新しい仲間についての情報を整理してみた。

 ブロンド。ペストマスクにシルクハットに杖。攻撃力の高い闇魔法を使う。暗黒石を所持している。よく見ると金髪。

 コルク。ピンク髪に白いリボン。手には常に四枚のトランプカード。カードの内容によって様々な技が使える。

 ブロンドがディラン鉱石(ディランの欠片の鉱物のことをこう呼ぼう。)についていろいろ教えてくれた。

 この大きさだとあと二つは必要らしい。また、鉱石のままでは使えないため、錬金術を使って変形させる必要があるともいっていた。

 準備が整ったため、俺たちは鉱山に入っていった。鉱山の中はジメジメしており、蜘蛛の巣がそこら中にあった。タリタがライト付きのヘルメットをつけてズンズンと進んでいく。

 足音が洞窟の壁に当たって響く。水の滴る音が坑道の異様な空気を作り出していた。そして…突然モンスターは現れた。

「…!」

 ドロドロのモンスター。静かに叫ぶ。目や口がどこについているかはよくわからなかったが、こちらを威嚇しているように見えた。

「任せてください!」

 ブロンドがシャドウショットをモンスターにぶつけた。

「…。…?…!」

 モンスターの一部が攻撃によって削れた。そして、モンスターのコアに当たる場所に暗黒石があった。

「暗黒石がコアのモンスターですか⁉︎」

 ブロンドがそう言った。モンスターは闇の魔法を放ってきた。かわすことはできた。コルクがクラブの3を使った。

「ライトシューター!」

 三発ほどの光の弾幕がモンスターに当たる。これは後で分かったことだが、スペードとクラブは数によって技の種類が変わるらしい。

「…?…!」

 モンスターは静かに塵となった。今回の戦闘を見たところ、ブロンドとコルクもまあまあ強い。ルタに勝てないのは仕方がないが。しばらく進むと鉱夫と出会った。

「そこのあんちゃんたち!もしかしてダンジョン目当てか?」

「ダンジョン?」

 ダンジョンがあるのか?確かに洞窟は魔素や瘴気が溜まりやすいため、ダンジョンもできやすいとは思うが。

「こっからもう少し先に行くとダンジョン化してる廃棄された坑道があるぞ。奥の方に不気味な青い石があってね。それがモンスターを引き寄せるとかなんとかで廃棄されたんだ。」

 青い石はおそらくディラン鉱石だろう。ディラン鉱石に含まれる魔力か何かがモンスターを呼び寄せるのだろう。ひとまずそのダンジョンに向かった。

『この先危険につき立ち入り禁止』

 この看板はあくまで鉱夫に向けてのものだろう。ダンジョンを制覇するのが冒険者の醍醐味だ。そう思って入っていった。

 廃坑は先ほどの坑道よりも暗かった。松明が置かれてないのだ。その代わりに不思議な色の宝石がボーッと光っていた。

「光魔法なら任せてね!」

 コルクが魔法で光源を呼び出した。そういえばコルクは光属性だ。文明を解放した時の瘴気は光魔法を使ったらある程度は抑えられるだろう。そして気づいた。先ほどの鉱夫が言っていたにしては明らかにモンスターが少ない。まるで誰かが狩ったようだ。少しだけ残ったモンスターたちを倒しながら進んでいった。そして…。

「縺斐a繧薙↑縺輔>縲よュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺??よョコ縺輔↑縺?〒縲」

 バグったように喋るモンスターだった。何かを恐れているようにも感じ取れた。魔力量からしてダンジョンのボスであるようだが。

「縺?d縺?縺?d縺?縺?d縺?縲縺励°縺怜スシ繧峨?螳滄ィ薙↓螟ア謨励@縺溘?」

 俺たちは武器を構えた。

「縺ゅ↑縺溘□縺代〒繧ら函縺肴ョ九l」

 モンスターは黒い触手を伸ばしてきた。ミアが速かった。気づくと触手は切れた。こういう系のモンスターは再生するだろうが、少なくとも時間稼ぎにはなるだろう。

「螂エ縺梧擂繧九?」

 モンスターは黒いドロドロの球体を複数個召喚した。球体は真っ直ぐにこちらへ飛んでくる。俺は避けたが…。避けた先にはやはりルミーがいた。

「え?」

 次の瞬間ルミーは球体の中に閉じ込められていた。中は液体のようで、ルミーは泡を吐いていた。

 その次に球体はコルクに向かっていった。

「うわあああ!」

 コルクはカードを取り出そうとしたが、遅かった。

「危ないっ!」

 ブロンドがコルクの目の前に飛び出してきた。ブロンドは球体に閉じ込められてしまった。コルクは逃れることができた。

「そんな…!ブロンド!」

「避けてください!」

 コルクが言う間も無くタリタが銃を放つ。コルクは銃弾をかわした。銃弾はそのままモンスターに飛んでいった。銃火器はやはり強く、モンスターの体がえぐれた。中には暗黒石があった。

「ライトシューター!」

 暗黒石に二、三発の光の弾丸が直撃する。暗黒石にはヒビは入ったが、ボスモンスターなだけはあってなかなか割れなかった。

「食らえ!」

 ミアの光魔法。暗黒石にのヒビが開く。そして…。

「縺ェ縺懊□縲!」

 パキーンと言う音と共に暗黒石が割れる。モンスターは何かを警告しようとしながら消え去っていった。そして割れた暗黒石が青くなった。

「ディラン鉱石⁉︎」

 ディラン鉱石が暗黒石に変わっていたらしい。タリタはそれを回収し、言った。

「あと一個ですね!」

 そしてダンジョンから出ようとしたが、迷子になった。

「あれれ…?おかしいなー?」

 びしょびしょになったままのルミーが頭をかいた。来た道に目印として松明を残したはずなのだが、松明の位置が変わっている。ワープ魔法の阻害もされているようだ。

「ディラン鉱石のもう一つぐらいないですかね?」

 クルハも疲れてきたようだった。そして背後から知らない声が聞こえた。

「やあ。君たちが探しているのはこれかい?」

 後ろを振り向くとディラン鉱石を持った少女が立っていた

「先生!」

 タリタが言った。

「先生?」

 俺が聞いた。

「はい!クレール先生です!先生は僕に機械について教えてくれた人です!」

 機械オタクなのだろうか。怪しい気配がするが。

「それにしても先生…?なんでここに?」

 クレールは少しにやけて言った。

「ただのモンスター狩りだよ。」

 怪しい。それに気づいたのかコルクもカードを取り出した。

「そういえば…。ミラム王国だっけ?の遺跡にはこんな秘宝があるってね。『カリュブディスの人形』。」

 なぜミラム王国を知っているのだろうか。カリュブディスの人形?機械の類だろうか。黄金のスパイスの時と同じで危険な物なのは変わりないだろう。

「ヴェレーニ・ド・ミラム。ミラム王国の国王だった人だ。彼はとにかく『黄金』を愛した。黄金の冠。黄金の指輪。黄金のスパイス。カリュブディスの人形も同じさ。黄金の機械だよ。」

 こんなにミラム王国に詳しいなんておかしい。何者だ。

「カリュブディスの人形はね、ミラム王国の人々が作り出した最高傑作の殺戮兵器でね。国一つ簡単に滅ぼすことができるらしいね。面白いと思わないかい?」

 狂っている。アトリアの時と同じだった。

「タリタくん。ディランの欠片を渡してくれないかな?」

「えーっと…。でも…これはみんなで頑張って集めてる物だし…。」

 タリタは勇気を出したようだった。それがよかったことなのかどうかは分からなかったが。クレールは残念ながらその発言を許さなかった。

「なら…。力ずくで奪うしかないか…。戦闘は野蛮だから好きじゃないけど。」

 この島のラスボスはどうやらブロンドとコルクでもなく、先ほどのモンスターでもないようだ。クレールはタリタも使っていたピストルを取り出した。クレールが引き金を引くより前にミアが小手調べに攻撃を仕掛けた。

 クレールは防御の魔法陣を展開した。ダンジョン全体に衝突音が鳴り響く。そしてクレールは引き金を引いた。ピストルの銃口から出た弾丸はそのまま俺に向かって一直線に飛んできた。後ろにはルミーがいる。俺がかわしたらいつものようにルミーに被害が出るだろう。そう思った。ブロンドが闇魔法でブロックしてくれたおかげで誰にも当たらなかったが。コルクはスペードの5を使った。コルクの目の前に大剣が現れた。

「重っ!まあいい!喰らえー!」

 大剣を振り回すコルク。クレールがコルクの持っているカードと大剣をほんの数発で撃ち抜いた。カードを貫通した銃弾がコルクに直撃する。手遅れだった。

「!!」

 コルクは弾丸で左手を撃ち抜かれた。赤い液体が飛び散った。

「ーっ!」

 コルクが叫んだ。ブロンドはクレールに向かってシャドウバレットを数発撃ち込み、コルクの近くにきて持っていたカバンを開いた。ブロンドは医者なだけはあって応急処置が手慣れていた。クレールは容赦無く銃を放ってくる。次に撃たれたのはルミーだった。ルミーはタリタを守っていたところだった。タリタを庇ったままルミーは背中を撃たれ、その場に倒れた。

「ルミーさん!」

 タリタは決意を固めた。ピストルをクレールに向けたのだ。

「ごめんなさい先生!でもこんなの間違ってる!」

 二、三発発砲した。クレールは防御魔法で弾丸を弾いた。そして言った。

「これは素晴らしい。いつの間にか絆まで出来ているとはね。だけど教えただろう?銃は隙を見て使う物だって。ほら。」

 クレールは相手が自分の教え子であろうと銃を放った。タリタの肩に当たった銃弾。タリタは肩から血を出しながら倒れた。クレールはまさに悪魔だった。不幸中の幸いで、コルクの応急処置が終わっていたため、ブロンドはタリタの治療をすることができた。クレールはクルハを見て言った。

「ほら。早く渡しなよ。君も銃弾で撃たれたくはないだろう?」

 クルハは怯えていた。俺は技を放った。

「草流・蒼翠の種!」

 辺り一面に蒼翠の種が飛び散った。次は…。

「草流・碧緑の芽!苔緑の根!」

 立て続けに技を放った。クレールは銃弾で蒼翠の種をいくらか消した後、防御魔法で技を受けた。そろそろ魔力も減ってきているはずだが。

「なかなかにめんどくさいねー。」

 クレールは腰についているカバンからグレネードを取り出した。そして安全ピンを抜いた。ルミーが勘づいた。

「まさか…!」

「このダンジョンの地盤は緩いって知ってるかい?グレネードの爆発ぐらいの衝撃でも落盤が起こるだろうね。」

 よく分かった。クレールは殺戮を楽しんでいるのだ。殺すためならディランの欠片だって捨てる。クレールはグレネードを投げるとワープ魔法を展開した。

 しかし、ザシュという音と共にグレネードが斬り落とされた。ミアだ。

「ざーこ。なめてるからこうなるんだよ。」

 クレールは驚きの顔をした。俺はその隙を見逃さず技を打ち込んだ。

「黒龍斬!」

 クレールはよろけた末に気絶した。治療が終わったタリタがクレールに駆け寄った。

「先生!」

 ダンジョンの出口がいつの間にか開いていた。×の目をしたクレールを連れて俺たちは鉱山を出た。外は天気が良く、地面が乾き、空が高かった。

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