料理島・前編 一夜の騒動
ルミーは飛行船の準備をしている。その間に俺とミアは稽古をしていた。
「なあルミー。その古代文明の名前なんて言うんだ?」
俺がそう聞く。ルミーは少し考えた後に言った。
「うーん…。確かアルカディア文明みたいな名前だった気がする。けど後から勝手につけた名前らしいから、本当の名前は違うと思う。」
ミアが油断している俺の頭をすかさず木刀で叩いた。
「いって!」
「こら!稽古の手を休めるな!行かせなくするよ!」
そんなこんなしているうちに飛行船の準備ができたようだ。俺とミアも飛行船に乗り込んだ。ルミーは操舵輪の場所についた。
「出発!」
歯車の音がなり始め、後ろのプロペラが回り出す。飛行船全体が浮き始めた。俺が疑問に思って言った。
「ルミー。これどういう仕組みで浮いてるの?普通歯車とかあまり使わないでしょ。」
「ははは…。細かいことは気にしないほうがいいよ。ほら…。ロマンだよロマン。」
飛行船は意外と速く、あっという間に淡海が見えてきた。俺は淡海を眺めながら呟いた。
「こうして見ると淡海って他の海と違って水の色が綺麗だよね。」
それを聞いたルミーは自慢げに答えた。
「ふふん!淡海の誇りのひとつだよ!」
あっという間に淡海の島の一つに到着した。
「私と姉さんの住んでて島だよ。今は管理者がいないけど。あそこにある家が私たちの家。今日そこで泊まろう。」
確かにもう夕暮れだった。俺たちは家に入っていった。
家はとても広かった。
「個人の部屋は全部で四つある。好きなところに泊まってくれ。」
「無駄に多いな。」
俺がツッコミを入れたがルミーはそれに反応せず、部屋に入っていった。
夜の十一時。俺は喉が渇いて目が覚めた。水を飲んでいると窓の外から音がした。俺は窓から外を見る。謎の水色の髪の少女が倒れていた。
「え?」
俺は慌てて家から飛び出した。
「おい!大丈夫か!」
少女は手をピクピクさせながら言った。
「み…水…」
俺は家から水入りのコップを持ってきた。少女は水を飲み干すとたちまち元気が戻った。
「ありがとうございます!えーっと…」
「俺は竜だ。」
「ありがとうございます。竜さん。私、クルハといいます。」
俺は家の部屋が一つ空いていたのでクルハをひとまず家に入れた。この騒動により、ミアやルミーも目が覚めたようだった。
「こんな夜中に何してんの。」
「竜、そいつ誰?」
俺が事の経緯を説明すると二人とも納得したようだった。
「詳しくはまた明日聞こうか。」
ルミーはそう言ってクルハに部屋の案内をした。
「本当にありがとうございます。寝床まで用意してくださって!」
俺は言った。
「いやいや、そんなかしこまらなくてもいいよ!」
そして一夜が明けるとクルハに質問をした。
「どこから来たの?」
「淡海のとある島です。ミラム王国の秘宝について調べてて…。」
俺たちは揃って言った。
「ミラム王国?」
「はい。えーっと…、アルカディア文明のことです。」
ルミーがすかさず反応した。
「つまり!君もアルカディア文明のお宝を探してるって言うわけね!」
「え?あ、はい。」
「実は私たちもアルカディア文明のお宝を探してるの!一緒に探そ!」
「あ…はい。同行させていただきます。」
ルミーは勢いでクルハを仲間にしてしまった。
クルハもアルカディア文明の秘宝を探していたようだ。そして、俺たちより情報をいろいろ知っていた。
「残念ながら現在はアルカディア文明は封印されてるんです。その封印を解くためには、淡海のどこかにある『ディランの欠片』と呼ばれる遺物を集める必要があるらしくて…。」
強い味方を手に入れた。さて、ディランの欠片を探しに行こう。ディランの欠片は全部で三つあるらしい。
俺たちはひとつ目のディランの欠片を探す旅に出た。
「実は…場所がわかっている欠片は一つしかなくて…。場所はここなんですけど…。」
クルハは淡海の地図を指差した。
「フェルカド島にあります…。」
フェルカド島。料理の街。観光名所として有名だ。今の時期は年に一度のお祭りの『フェルカド祭』が行われているらしい。夏休みにぴったりだ。俺たちは飛行船でフェルカド島へ向かった。