おとうさんとおなじ色
きょうは、おかあさんは おしごとで いそがしいの。
いろんな色のいとで、お花とかレースみたいな きれいな もようを ぬうの!
ハンカチやリボンにドレスまで!
ししゅう、っていうんだって。
いまはね、けっこんしきようの ドレスに ししゅうを たのまれたんだよ。
ゆきは、おかあさんの おしごとの おてつだいは できないの。
でもね、ゆきが、
「ひとりで おつかいできるよ!」
って、いったら おかあさんが、
「じゃあ、おねがいするわね。」
って、ゆきに いったの。
おかあさんの おてつだいができる!
うれしくて、ゆきのうさぎの耳がピン!となった。
おかあさんに、おかねを おサイフに いれてもらって、おかいものようの カゴをもって、おつかいの じゅんびは、できたよ!
「おかあさん、いってきます!」
「ゆき。きをつけて、いってらっしゃい。」
いつものおみせだから、まいごにならないよ。
ぱん屋のおばあちゃんのところで、いつものぱんをかったら、ひとりでおつかいえらいねって、1つオマケしてくれたよ!
にく屋のおじさんも、ちょっとオマケしてくれた。
やおやさんのおばさんも、おイモを1つおおくくれたの。
くだもの屋さんの前をあるいていたら、おねえさんが、ゆきにはなしかけてくれたよ。
「ゆきちゃん、がんばってるからごほうびだよ。
かたちはわるいけど、おいしいリンゴをあげる。
おかあさんの おてつだいえらいね。」
そういって、赤いリンゴをくれたよ!
「ありがとう!おねえさん。」
「気をつけてかえるんだよ。」
「はーい!」
おもくなったカゴを、よいしょと もちあげたとき、コロンとリンゴがおちちゃった。
「まってー!」
コロコロころがって、コツンとおとこの人の足にぶつかって とまった。
おとこの人が、しゃがんでリンゴをつかむと、こっちに わたしてくれた。
「ありがとう。」
ゆきはおとこの人に、おれいをいったよ。
でも、ゆきは おとこの人のあたまの上の耳をみて びっくりした。
「じゅうじん?」
「そうだよ。ユキヒョウっていう じゅうじんなんだ。きみは、うさぎじゅうじんだね?」
「うん!ゆきは、うさぎじゅうじん。おかあさんといっしょだよ。」
「そうか。ゆきちゃんっていうのか。おれは、ヒョウガだよ。」
ヒョウガさんが、ゆきをジッとみる。ゆきもヒョウガさんをジッとみちゃった。
だって、目がね、なんだか ふしぎなの。
なんでだろう?
「ゆきちゃんのおかあさんに、あいにきたんだよ。おうちに つれていってくれるかな?」
「おかあさんのことしってるの?」
「そうだよ。なかよしなんだ。」
「じゃあ、いっしょにかえろう!」
ヒョウガさんが、カゴをかるそうにもちあげた。
ちからもちだって、ゆきがいったら、もうかたほうの うでに、ゆきをもちあげたよ!
すごい!たかいからとおくまで見えるよ!
お空もちかいよ!
ニコニコわらってヒョウガさんを見たとき、ゆきの耳がピン!ってなった。
「わかった!
ゆきの目とヒョウガさんの目は、おなじ色なんだね!お空の色だ。」
「そうだね。おなじ色だ。うれしいな。ゆきちゃんのおかあさんは、赤い色だったね。」
「うん!ゆきね、5さいのおたんじょうびに、赤いリボンをもらったの!」
「そうか。おかあさんとおなじ色だね。」
「うん!」
おうちについて、ヒョウガさんからカゴをうけとって、トビラをあけた。
「おかあさん!ただいまー!
ゆきね、おともだちつれてきたよ。」
「おかえりなさい、ゆき……。
ああ! ヒョウガ!」
「マリア!あいたかった!」
おかあさんがヒョウガさんにギュッと抱きついて泣いてる。
なんで泣いてるの?うれしくないの?
ゆきは、なみだがでてきて、おかあさんにきいたの。
「おかあさん、なんでないてるの?悲しいの?」
おかあさんは、ゆきが なきそうなのを見て、えがおでいったよ。
「ゆき。これは、うれしなみだよ。だって、おとうさんとあえたから。」
「おとうさん?」
ヒョウガさんが、しゃがんで ゆきをみつめた。
ヒョウガさんも、なみだがでていた。
「あえてうれしいよ、ゆき。おとうさんだよ。」
「ヒョウガさんが、おとうさん?」
「そうだよ。ほら、おなじ色をしているよ。」
そうだ!ゆきとおなじ目の色だ!
「おとうさん!」
ぴょんぴょん!と、とびはねていたら、おとうさんが、たかいたかいしてくれた。
おかあさんがクスクスとわらっている。
ゆき、うれしなみだは、わからないけど、うれしくてえがおになるのはわかるよ!
おとうさんとおなじ色は、うれしいよ!




