ようこそ桜の国へ
こんにちは のどあめです。
桜をあまり見かけない幼少期を過ごしていましたが、今住んでいる所は少し足を伸ばせば桜ばかり。職場は桜の名所の近くです。
「いいわね、お花見ができて」と言われますが、実はそうではありません。
幾つかの穴場でこっそり楽しんではいましたが。年々増えていくんです、花見客が。
満開になると近づけない花見の名所。
どうしても見たいとなれば、早出出勤で少し遠回りして早朝花見。と言っても時間が限られるので15分クイック花見、それしかない。
そんなマイ穴場もSNSやメディアで周知されているようで。どこへ行っても花見客。最近は海外からも花見客が参戦してきます。
まだ花が咲いてなかったり花冷えの雨の中、傘をさして向かう後ろ姿を見ると気の毒だなと思うのですがね。
いるんですよ。店の前や神社の階段で地べたに座っている、とつくにからの観光客が。狭い歩道なのに荷物を無造作に置かれて通行の邪魔だわ。おまえら、じ ピーーーッ!
さらに店の前で立ち食いしているし。本当におまえら、どこの〜(以下、略)と書いてはいけない毒を内心連発しちゃいます。年を取ると許せなくなるのはなぜなんだぜ。
さて、コロナ前の話です。
当時は経済が絶好調だったとある国、某国の観光客がたくさん来ていました。私も開店前の店に並ぶ姿やユニクロの紙バックを抱える姿をよく見かけていました。
そんなある日。早帰りしてマイ穴場でクイック花見をしようとやってきた私。なんと、いつも使うショートカットの道の前にでかい観光バスが立ちふさがっていたのです。バスから某国のツアー客がぞろぞろと下りてきました。
当時、私は某国にあまり良い思い出がなくて。関わりがあった頃、某国では反日が正義の時代でした。あからさまに敵視されて、ここまでやるか?と思う経験をしていたのでトラウマになっていましてね。彼らが苦手でした。
『あ~。せっかくの穴場が~』と思いながら私はツアー客の後ろを憂鬱な気分でついていきます。
その日は桜は満開で晴れ。せめて一目だけでも見ておこうと思って。その時です。
キャーッ
と三歳か四歳位の女の子が歓声を挙げて走りだしていきました。
女の子の背中を追うように、桜が見える所まで坂を下りてみると。「ああ、これは声をあげちゃうよね」と私は呟いていました。
そこには夢の様にきれいな景色が広がっていました。
真っ青な空と満開の桜の海。
足元には連翹と黄色い菜の花の波。
桜の海をめざしてかけていく女の子。
その姿を見て思ったんです。
苦手な人達だけど。彼らにも私達日本人が感じる美しさを分かち合える感性があるのだと。
ならば、いつか分かりあえる日が来るのではないかと。少しだけ夢を見てしまった。
はしゃいでいる女の子の背に向けて、私は心の中で呼びかけました。
ようこそ 桜の国へ。
そうして、私は立ち続けて眺めていました。桜の海と女の子の姿を目に焼きつける様に。
――あれから何年もたちます。
あの時の子は大きくなったことでしょう。あの日見た満開の桜の美しさを、感激を、覚えていてくれているのかな?
願わくば。あの日見た日本の桜を、その美しさを思い出して欲しいなと思うのです。
そして桜の美しさには多くの人の手と想いがあることにも、いつか気がついてくれたらいいなと思うのです。
おしまい
あの子はもう中学生か高校生になっているでしょうか。
色々ときな臭い今だからこそ、覚えていて欲しいなと思います。あの日迎えてくれた桜の海の美しさを。
あれから景観が変わり、同じ景色は見られない現在。あの日見た桜の美しさは奇跡だったのだなと思います。以上、備忘録として記します。




