表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/199

第四話 相談という名の現状確認

第二幕 人生相談ってこんな重い話をするやつだっけ?【始】

「今の幕府ってさ、お金も無いし兵力も無い。権威だって無いに等しいでしょ? 今のままじゃ良くないと思うんだよね」


 主に俺の生命の安全的にね。


「確かに上様のおっしゃる通りかと。今のままでは民百姓が可哀そうでなりません。戦になれば京は度々焼かれ、家財を失い、田畑は踏み荒らされ食うに困るのが通例。それもこれも幕府に力がないことが原因かと」


 お、おう。そっちか。

 確かにそれはそうなんだけど、俺の命もタイムリミットありなんだよね。


 でも、将軍がこんな風に逃げ回っているから世が安定しないってのは理解できるよ。


 けどさ、今の状況で何ができる?

 人の心配する前に自分の心配しないと。


 はてさて、どうしたもんかな。


「藤孝くんは、どうしたら良いと思う?」

「私にはこれといって。資金を貯め、兵を増やし、秩序を維持する。しなければならないことはわかるのですが、ではどうすれば良いか皆目見当がつきません」


 そりゃあ、そうだよな。

 だから今の今まで戦乱が続いてしまってるのだから。


 自分たちに何ができるか。

 こういう時は、自分の強みや弱みを分析するに限る。


「俺らの強みって何だろう?」

「それは武門の棟梁つまり将軍という権威ではないでしょうか」


「そうだな。逆に弱みは?」


 イケメン藤孝くんの顔が、グっと苦いものを飲み込んだようになる。


「……権威に裏付けされた実力が無いことにございます」


 うん、言いにくいことを言わせてしまった。

 すまん。


「はっきり言ってしまえば、権威以外なにも無いな」

「認めたくないものですが」


「仕方ないさ。無いものは無いんだから。これでわかったのは、権威しか使えるものがないってことだな。じゃあ、権威があると何ができる?」

「停戦の調停や官途状かんどじょうの発行などでしょうか」


 おや、聞きなれない言葉が出てきたぞ?

 そんなの歴史の授業で習ったかな。


官途状かんどじょうってなに?」

「官途状は、官位を私称することを認める書状にございます」


「官位って○○ のかみとかってやつ? それを私称? 良いの?」

「朝廷を通さないものですから、良いとは言えませんが、室町幕府成立の頃より行われております。俗に言う武家官位というやつですね。私であれば兵部大輔ひょうぶたゆう、○○ のかみであれば、三好長慶殿が筑前守ですね。我らの場合は、どちらも正式なものですが」


 なるほど。

 停戦の調停もそうだけど、官途状はお金の匂いがするぞ。

 元手がタダで売り放題だ。

 あとはニーズが相応にあれば良いのだけど。


「官位ってさ、みんな欲しいのかな?」

「それはもう! 数多の武士からそういった願いが届きます」


「当然、何かしらの対価を貰うんだよね?」

「一応、対価は受け取りませぬが、進物が無ければ交渉の席すら用意されないのが慣例です」


 ははは。それって対価だよね。

 わりと面倒くさいやつの。


 いわゆる時価って言えばいいのかな。

 いくら献上したらいいかオープンにされてなくて、相手が満足するであろう物を用意しなきゃならん。


 多くても返してくれることはないし、まさに権力を笠に着て、殿様商売ってやつだな。


「対価はお金?」

「銭もありますが、金や銀それと地の物の特産品などですね」


 おやおや。

 また金の匂いがしてきたぞ。


「各地の特産品が届けられるってことだよね? それってどうしてるの?」

「換金して幕府の運営費としております。いくらか残して別の大名への返礼の品にもしておりますが」


 きた!

 これは商社の経験が活かせるぞ。


 現代みたいに輸送網が無ければ、他国の特産品なんて海外のブランド物のようなものだ。


 確か、日本橋にあった看板には、中山道ルートで京都まで530㎞くらいと書かれていたはず。

 名古屋のある尾張からでも100㎞くらいあるだろう。

 100㎞と言えば、車なら高速道路で二時間もかからない。しかし、戦国の時代では人力が基本。

 馬に曳かせたところで、どうやったって五日~十日はかかる。

 水運が使えればいくらかマシだけど、場所は限られる。


 そうなると輸送コストは商品代を超えてしまうんじゃないかな。

 現代では日本からアメリカに海路で輸送しても、二週間もかからず届いてしまうことを思えば、戦国の時代は国内ですら海外と同じくらい隔絶した距離を感じる。


 つまり、進物として輸送コスト無し、原価無しで受け取れる各地の物産は、希少性の高い金の成る木じゃないのか。


 これを一大消費地である堺に近い京の町で売り払えば、相応の価格になるのだろうけど、こういう特産品というのは、距離が遠ければ価値が高まるものが多い。


 気候や環境が変われば生産できないものが増えるからだ。

 当然、受け入れられないものや、価値を見出されないものもあるから注意は必要だ。


 雨の降らない地域で傘は売れない。

 靴を履かない地域ではスニーカーは売れない。


 商社に入ると、それを売るのが商社だと教えられるのだが。



 ざっと思い浮かべるだけでも何個か候補が出てくる。南方からは砂糖、北方からは俵物だっけか。

 米なんかも生産が難しい地域もあるし、今は茶道も流行り始めているらしいから、博多から海外製の茶器を集めても良いかもしれない。


 良し。

 何となくお金を集める方法は見えてきたな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ