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第十五話 幕府印の火縄銃計画

第五幕 義藤って意外とインドアだったらしいので【始】

 幕府製の火縄銃計画はきっと上手くいく気がする。

 用意するのが難しい販路は、忍者営業部が拡充していけば自然と確立できる。

 決定権を持つ大名や重臣へのアポイントも将軍の使者という立場があれば、難しいことではない。


 火縄銃が売れるというのは、歴史を見ても既定路線なので作れば作るだけ売れるのだから、手を出さない理由はない。


 原材料の仕入れも、官位斡旋の対価を銭ではなく物品として求めたりしていけば、まとまった量が得られるはずだ。火縄銃販売の代価もその方法でいけそうだ。


 特産品なんかは、一度売却して銭で納める必要がある。

 つまりは、現地で商家が購入しているという訳だ。

 そして大規模な商家でなければ、遠方の取引先に売却し、その地で流通する。


 この単純な流れでも商家が少なくとも二か所関わっているのだ。

 となると、利益を得るものは、生産者、現地商家、取引先商家と三者となる。

 その結果、値段は高くなってしまう。


 俺としては、この中間業者を端折って儲けようと考えている。現代でいうところのダイレクトセールスに近いのかな。

 官位斡旋などの対価を銭ではなく、物納で集めた特産を幕府まで届けてもらう。銭が物産に代わるだけ。

 それを幕府が必要とする別の地域の大名に売りつけるわけだ。


 この方法なら、生産者は、いつも通り買い取ってもらう金額で納税できるし、大名にも、さほどデメリットはない。

 むしろ銭に変える必要がないため、利益獲得者を少なくとも一人減らせる。


 本当は地場の商家の利益を奪ってしまっているから、大名にとってはマイナスになるだろうが、この時代の税制はゆるゆるで、商家がいくら儲かっているか知るすべはない。

 おそらく大名側はそこまで気にしないだろう。地場の商家に気が付かれて、とやかく言われたら、その時どっちを選ぶか決めてもらえば良いだけだ。



 最終的には、各地に支店を置いて直接生産者から買い付けができれば完璧だ。

 忍者営業部が各地を調査してニーズを探り、各支店が生産者から直接買い入れ配送する。


 面白くなってきた。

 こうなってくると配送手段と物品の集積場所も揃えたくなってくるな。


 戦国の時代も現代も物流のメインは海運だ。

 大量輸送するには船が最も良い。

 現代とは比べ物にならないほど、リスクも大きいけれども起伏の多い日本において陸運より海運が良いのは間違いない。


 金のない幕府では船をたくさん用意できないから、今のところ船を所有している集団に依頼するしかない。

 戦国時代に船を多く所有しているのは……そう、海賊さんです。

 海賊なんて映画の世界でしょ。正直怖いんだけど。

 でもね、他の候補がいないんだよ!


 あとは超大手の商家が船団を組んでいるけど、こっちが都合良く使えないだろう。

 ある程度、事前に交渉しておいて借り上げにするか、たまたま行き先が同じであれば少しは載せてもらえるかもしれない。


 海賊さんの勧誘といっても今抱え込めるほど収益が確定している訳でもないので、海賊便に委託するか、時間がかかっても船を持つ商家に依頼することになるだろう。

 今は固定費を積み上げるよりも、割高でも外部発注が正解なはず。


 いずれ幕府水軍を作って海外とも交易が出来たら良いな。



 後は、物品の集積所だな。

 これは、早めに用意しないといけない。

 山深い朽木谷に献上品が届いたって、配送に便利な場所に一度持っていかなきゃならないんだから、無駄になってしまう。

 現代のように気軽に荷物を配送するサービスなんてないから、人力荷車で輸送してれば無駄なコストがかかってしまう。


 問題は、力が物をいう戦国乱世において安全に保管できる場所が確保できるかということ。これに尽きる。


 信用もできて、守れる武力があって、水運にも向いている。そんな場所なんてあるのかと思ったのだが、意外なことに簡単に解決できた。


 武田信玄の話を出したときに、甲斐か若狭のどっちかという話になった。

 さらに若狭武田には俺の妹が嫁いでいて、若狭武田の嫡男は俺の義理の弟になるらしい。

 さらにさらに、若狭小浜は日本海側の海運の要衝で集積所を作るのに持ってこいの土地だった。

 もっというなれば、若狭で降ろした荷は琵琶湖を経由して堺まで輸送され、太平洋側の航路で各地に運ばれるというオマケつき。


 今の時代のこと、結構詳しくなったよ。

 俺があまりにも無知すぎるので楓さんに教わったんだよ。

 クールビューティーな楓さんに、そんなことも知らないのかと、蔑むような冷たい目で教わる授業。

 流石にそんなことは言わないけど、あの目つきは、そうとしか感じられない。


 でもね、その視線悪くないんですよ。

 真面目な委員長タイプに勉強を教わる馬鹿の組み合わせと言えば良いのか。

 そんな甘酸っぱい青春は過ごしてこなかったなぁと高校時代を思い出してしまったくらいです。


 それはさておき、知らないところで、海上輸送の重要地点にご縁があったようでした。

 これは義弟くんに頼むっきゃないと手紙を書いて……は、字が汚いので藤孝くんにお願いして、暇そうにしていた幕臣の一人に託した。


 良い場所を貸してくれると良いな。

 幕府の役職か何かに補任してあげれば元手がかからず集積所を確保できるのではと皮算用している。

 若狭武田からの連絡が楽しみだ。



 さて、夢は広がったが火縄銃の話だった。

 火縄銃を作ること自体は難しくないだろう。

 すでに火縄銃を作る工房は堺にも国友にもたくさんある。

 つまり火縄銃を作れる職人が多くいるということだ。


 問題は火薬と弾丸。

 弾丸は鉛を使用していて輸入が多い。

 そこまで高くないし、希少でもないから、海外製を買うとしよう。

 しかし現代だと金色だった記憶だな。あれってメッキなのか真鍮なのか。ちょっとわからん。


 形は全く違うのはわかったけど、現代に合わせることで、どういう結果になるかイメージが付かない。

 まずは、火縄銃を自作できるようになるのが先決だな。


 火薬の方は、かつての俺、義藤が凝っていて火薬の調合まで自分でやっていたらしい。

 だから作り方はわかるが、硝石は輸入品の中でも特に高い。

 ただ、すでに日本でも硝石作りは始まっているようで、火縄銃に詳しい人たちには作り方も知られている。


 しかし火縄銃そのものを大量に揃えている大名が少なく、硝石の生産もそこまで熱心ではないようだ。

 義藤の書付にも、トイレの下の土から精製するものなりと記載があるし、作り方も細かく書かれている。実際には糞尿を含んだ土であれば良く、人のものでなくても家畜でも良いらしい。


 硝石がないと火縄銃は無用の長物になってしまう。

 火縄銃の需要を考えると、早めに取り組んでいくしかない。

 硝石は商材にもなるのだから、作っても損はないはずだ。

 こんな危険な軍需物資を売ってしまうのは、自分の首を絞めるようだが、今の幕府に収入源はない。


 とにかく売れる物は売って資金を貯めないとね。

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