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第百九話 配置転換

【王】変転

 初めて相まみえた三好長慶さんとの会話を受けて、落ち込みながらも奮起した俺たちは、いつものメンバーで会議を始めた。

 滝川さんたちは清家の里に戻っており、石田さんは朽木谷や若狭国小浜港にある蔵の管理、小笠原さんは小笠原流弓馬術礼法の指導のために地方巡業中。


 そこで藤孝くん、和田さん、服部くんの四人で話し合うことに。

 猿飛弥助はどっか行っちゃった。

 和田さんも何にも言わないし、忍者営業部の人たちが守ってくれているから大丈夫だろうけど。 

 ちなみに、小笠原さんに関しては、状況が変わってきたので、キリの良いところで戻るように連絡するつもりである。


「和田さんは、あの場にいなかったけど内容は知ってるよね?」


 おそらくと予想しながら、問いかけてみる。

 同席できなくとも、和田さんならどこかで話を聞いていた気がするんだよな。


「しかと。一から十まで」


 やっぱりね。護衛に忍びの人たちが守ってくれているのだし、天井か床下か盗み聞きをしようと思えば出来てしまう。あるとすれば、本人がしたか部下がしたかの違いなだけだろうな。

 

 ――そう考えると忍者って何でもアリだな。なぜ虐げられるのか分からん。


 現代では、アニメの主人公になっている様を見せてあげたいものだ。


「流石だね。まあ、あんな感じで、こてんぱんにやられちゃったけど、やられっぱなしには出来ない。そうだ、ここの人払いは出来てる?」

「ご安心を。鼠一匹もおりませぬ」


「忍者営業部の皆は優秀だね。安心して話が出来そうだよ。話は戻るけど、善後策を練るために、みんなの知恵を借りたいなって思ってね」

「色々と考えねばならぬことがたくさんありますね」


「そうなんだよ。いくつか分野別にして考えようか。考えなきゃならない項目は、どんなのがあるかな?」

「大別するなら、軍事、政務、外交といったところでしょうか」


「あんまり細かく分けても分かりにくいし、そのくらいにしておこうか。とりあえず明日の将軍帰還のお披露目までに大筋だけでも決めておかないといけないしね。それじゃあ軍事から。意見のある人いる?」

「直轄軍の扱いと目指す規模を決めるのがよろしいかと」

「それに付随して、率いる将も不足しているようです」


「直轄軍だよなぁ。将軍山城の戦いでは実力を見せてしまったけど、滝川さんに頼んでこっそり帰したし。俺とのつながりまではバレてないと良いけど」

「そこは問題ないかと。訓練がてらに道なき道を走り抜けると言っておりました。追いつける者はいないと思われます」


「……あの人たちは、いつも走らされているね。そのおかげで助かっている部分は多いのだけれど」

「厳しければ厳しいほど、彼らの命を救う結果に。滝川殿の優しさかと」


 彼らに滝川さんの優しさが伝わっていれば良いんだけど……。

 俺の中でのあだ名は髭軍曹なんだよな。怖くて厳しいイメージしかない。


「そうだね。うん、滝川さんの優しさだよね。じゃあ本題の彼らの扱いから。そのうち、精鋭を少しずつこちらに呼び寄せるにせよ、当面は清家の里にいてもらおうと思う」

「力を隠すのでございますね?」


「うん。まだ京の様子が掴めない。多くの兵を連れてきて三好家を刺激するのも怖い。長慶さんは大丈夫な気がするけど、三好家は大きい分、家臣も多いし」

「上様の御身を守るのであれば、忍び衆で手が足ります。良き御思案かと」


「じゃあその方向で。ただし、規模の拡充はどんどん進めてほしい。きっと必要になる時は近い」

「清家の里に伝えておきまする」

「あとは将の問題ですね」


「去年の段階でも足りてなかったからね。そうだ尾張の方へ勧誘に行ってみてくれないかな。豊臣秀吉って人を探してほしいんだ」

「聞いたことのない名ですな。そのような珍しい姓であれば、聞き覚えがありそうですが」


 確か農民の出身だから豊臣姓は後付けだったような。

 でも出世する前の名前は、見たことある気はするけど、はっきり覚えてないんだよ。

 名前の方は秀吉だったはず……。


「織田家にいるかもしれない。苗字は違っても名前は秀吉……かも?」

「……心利きたるの者に探させましょう」


「あやふやな話でごめん。よろしく頼みます。それとこれは提案なんだけど、服部くん、歩兵隊の隊長やってみない?」

「は? 某がですか? しかし上様の護衛の任もありますし」


 急に話を振られてビックリしているご様子の服部くん。

 会議で気を抜いていると、そうやっていきなり名指しされるのですよ。


「元々、忍びの人たちとの繋ぎと護衛って役割だったけど、忍者営業部も拡充されて守りは強固になったし、繋ぎ役は藤孝くんでもいけそうだしさ。それに服部くんは槍働きしたいって言ってたじゃん?」

「某からすれば、有難いご提案なのですが……。よろしいのでしょうか?」

「私もここを離れられぬようになると思われる。おぬしが離れても問題なかろう」


 服部くんは、和田さんを気にするようにチラと視線を送ったのだが、当の和田さんも問題なしというご意見。これは全会一致ですな。


「決定! 何か理由をつけて、ここを離れた後は、清家の里に行ってくれ。そうだ、せっかくの機会だし、三河の実家に顔を出してみたら?」

「御恩情ありがたき幸せ。お言葉に甘えさせていただきまする。同じ方向ですから私も尾張国へと参ります」


「気にしなくて良いのに。親御さんにもよろしく伝えておいて。尾張の任務も絡むし、このまま準備しに行っちゃって良いよ。藤孝くん、何か手土産を見繕ってあげてね」


 こんな感じで服部くんの帰省と清家の里行きが決まった。

 なんだかんだ嬉しそうに離れていった服部くんを見て、良い決断だったなと我ながらに思う。

 一区切りついたので、一旦と休憩し、藤孝くんの戻りを待って再開することにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コテンパンにのされても、すぐに立ち直る強さを手にされたのですね^_^ これまでの苦労や失敗、悲しい別れをきちんと糧にされて、頑張って長い道のりを【みんな】で行けるといいですね^_^ [気に…
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