帰省
家に帰って1人考えた。かわいいの意味。地味過ぎてかわいい?大学生っぽくないところが気の毒でかわいい?まさか女性としてかわいい?ただおちょくられただけだろうという結末にした。なかなか会長の周りにはいない人種だからからかい甲斐があるのかも。それなら納得できた。
その後もバイトにはいつも通り通ったが、3時前には会長が事務所に来るようになった。そしてなぜだか帰り際にいつも会長室に呼ばれ、少し会話をしてから帰るのが日課となった。会話はいつもくだらない世間話やら私への質問。私は面白くもない人間なのになぜだか私の言葉に会長はいつも笑い転げていた。そんな会長を見るのがいつの間にか自分の癒やしにもなっていた。
夏休みが近づいていた。実家からも帰って来いと電話があった。夏休みの間に車の運転免許を取る予定だったのだ。それには1ヶ月程地元にいることになる。そうなればバイトは長期に渡って行けない。とりあえず会長に相談しようと話したところ、こっちで免許ぐらい取ればいいと言ってきたが、慣れない都会で免許を取るより、慣れた地元のほうが絶対取りやすい。しばらく休ませてほしいと言うとあっさり許可してくれたが、心なしか少し寂しそうだった。というか私も寂しかった。
「帰省は許すが、その代わりお盆に一度こっちに戻って来い」
わたしはまた頭にクエスチョンだ。普通、お盆だからこそ実家に帰省だよね。
「なぜでしょう?戻ってきてもまた帰省して自動車学校に通わなきゃですし」
「事務所がどんどん汚くなっていくだろうし、そもそもそんなに長くお前と話せないのはイヤだ」
子供のような言い訳に会長が可愛く見えた。私と話すことを楽しいと思ってくれているんだ。私は日帰りでならと了承した。