初めて読んだ、また読みたい人生を変えたエッセイ。
わたしが漠然と夢をもったのは一冊のエッセイだった。
自分は将来どんな大人になりたいかなど、明確に考えられるほど頭はよくなかったし、小学校の【将来なりたい職業】には、何の仕事をするかも解らない、特別なりたいわけでもないが、当時【行列のできる法律相談所】が好きだったので《弁護士》と記した記憶がある。
そんな私が初めて読んだ小説はエッセイであった。中学1年生くらいの頃、図書館でみつけた。とある精神科医が書いた本であり、筆者もタイトルも忘れてしまった。
それは現在看護師となったわたしでも、その後読むことの叶わない変わったエッセイであり、精神医学的な専門知識などはあまり交えず『精神病とは能力の欠落なのか、それとも能力なのか?』ということに焦点をあてた変わった作品だった。
そのエッセイの筆者が診ていたある鬱病の患者は『わたしは大罪を犯した、どうしよう、どうしよう!』と、俗にいう【罪業妄想】を患っていた。その患者は贖罪するようにボランティアへ傾倒し、活動が認められ、ボランティア団体の長となり、のちに市議会議員になったという。
ある強迫性障害の患者で『わたしはガンに違いない』という妄想にかられ、一月に2度は人間ドックで全身を精査しなければ安心できない人間を診ていた。その後その患者に本当のガンが見つかったという。医者が学会に発表できると驚くほど早期のガンだったらしい。
そんな話が綴られていた。
そのエッセイを見てから、わたしは【精神病】というものに興味を持ち始めた。わたしはおそらくこのエッセイを手に取っていなければ、看護師など志していなかっただろう。
人生の岐路とはどこにあるか解らない。そしてどこにつながるかも解らない。
この著作の筆者も作品名もすでに記憶にない。だがわたしの人生を変えた一冊だ。機会があれば、また読み直してみたい。