第15話ー②
「き、ーき、つーき。起きなって。起きろ。」
「ん?んえ?あぁ………」
耳元で呼ばれる声がして、目を開けると超至近距離に音露の顔があり、少しびっくりした。
なんでこんな眠いだろう。はぁ、まぁいいや。起こされたってことはまもなく着くってことだ。起きるかぁ。
体を伸ばして、外を見る。もう外は、見たことの無い景色が広がっていた。
「おはよ。」
「おはよう、ございます。」
「おはよう。」
伸びをしたので起きたのに気づいたのか、後ろから悠華と空優。前から美桜菜が話しかけてきた。
ていうか美桜菜はなぜパソコンを………
「ちゃんと先生に許可は貰ったわ。こうゆう時間も勉強に使ってこそでしょ。」
「後なんかの参考書も持ってたよな?僕見たよぉ。」
「あぁ、簿記の参考書よ。来年の2月が試験だからね。というか、覗き見とはいい趣味ね。」
「な、違うよ。隣が爆睡してて暇なんだもん。後ろは割り込めないぐらいの女子トークしてるし……」
「あはは、ごめんね。忘れてたわ。」
「俺も爆睡してたからなぁ。」
にしてもなんでこんなにも眠いんだろうなぁ。なんだったら、寝すぎて眠いとかいう、よくわかんないことになってるかもしれない。
ふと、新幹線内の電光掲示板を見ると次は京都駅とある。全然行きは景色見てないし、帰りは起きてられるといいなぁ。無理だと思うけど。
「よーし、皆。そろそろ降りる支度をしろー。」
そう学年主任の声があり、皆がざわざわと動き始める。こちらも音露が立ち上がり、上にある俺と自分の荷物を取る。
「ほら、月輝の。」
「さんきゅ。」
受け取って、準備をするとそのあと新幹線が停止した。着いたか。
学年主任の合図で順番に席を立ち、新幹線を降りる。
ここから、昼食会場に行って、そのあと清水寺。そんでホテルだったか。
「こっからはバスだっけ?」
「そうです、ね。」
京都駅を出てバス停に向かう。バスは学校と同じ席にということで俺らは後ろに座れた。
「また、月輝君はおねんねするのかしら?」
そう、美桜菜がおどけるように弄って来る。流石に寝ないよ。ここまで来て。
バスに乗って、前回と同じ席で座る。
バスが進み出すと見たことも無い景色が流れてゆく。
「こうゆうの、旅行、って感じ、です、ね。」
「だなぁ。」
「うんうん。僕もわくわくする。」
まぁなぁ。言ってることはわかる。知らないとこって感じもするし。
バスは市内を進み、しばらくすると1件の京料理の店に着いた。
中に入り、2階のお座敷に通される。そして席は、これまで通り班ごとだ。
隣は、音露。対面に女性陣だ。
「どんなのが来るか楽しみだねぇ。」
「んまあ、それはそうだな。」
その場所特有の、というのは普通に楽しみだ。
「私も楽しみよ?この店は来たことないもの。どんな料理か、味はどうか。ね?楽しみじゃない?」
「そんな視点で見てるのは美桜菜ちゃんだけだよぉ。」
「うんうん。悠華の言う通り。」
「悠華ちゃんも月輝も酷くない?」
「「酷くない」」
思わず、悠華とハモってしまった。でも実際そうだろ。食べなれてる、ってやつなのはわかるが。なかなかそんな楽しみ方するのはいないと思うけど。
そんなことを話していると、料理が運ばれてきた。
湯豆腐に、かぼちゃと海老の天ぷら。具は麸だけのお吸い物。そして白米。
美味しそうだが、正直この年代だと人を選びそうだ。もちろん俺は好きな方だが。
ちらっと周りを見るとやはり、賛否両論って感じではあるらしい。
全員に食事が出されると、それぞれが挨拶をして、食べ始めた。
「ふぅ……この湯豆腐、美味しい………」
そうため息混じりの声が隣から聞こえてくる。
夏休みの時に、美桜菜の叔父さんの別荘行った時に、たまに思ってたが、所作が綺麗だよな。
いつもって訳じゃなくて、こうゆう豪華だったり上品な料理を食べる時に限ったことだが。
正面の美桜菜と比べてもそこまで遜色ないように思う。素人目だが。ただ、美桜菜の方が洗練されている気はするが。
「この塩美味しいな。欲しいかも。」
「いやどうゆう感想?」
素直に思ったままの感想を呟いたら悠華に突っ込まれてしまった。
そんな感じで1時間ほどの昼食を終えると、またバスに乗って移動になる。
清水寺では、先生がランダムで作った班で行動する。なんで、自由行動の班じゃないのかは分からないが。
バスの座席というか位置はもちろん今までと同じだ。
「美味しかったな。」
「だなぁ。僕もあの湯豆腐は虜になっちゃいそうだよ。」
「お吸い物も、美味しかった、です。」
俺らには京料理は大絶賛だった。
別に薄口が好きとかではないが、食べれなくは無い。美味しいとは思う。そんな感じだ。
「で?美桜菜ちゃんのお眼鏡には叶った?」
「言い方……まぁ、美味しかったわよ?どれも丁寧な味だったわ。十分満足できる味じゃないかしら。」
「おお……」
「いやいや、ちょっと社交辞令入れたろ。」
「あらバレた?」
「バレた。」
美桜菜はおどけてちろっと舌を出し、てへぺろといったような顔をした。




