第12話ー④
「えっと……紫乃也 莉未です。よろしく、で、いいのかな?」
「あっ、季応 経杜です。よろしくお願いします。」
教室に向かいながら、お互いの自己紹介をさせている。そういえば、他の美桜菜以外はここ来たんだっけか。
「音露先輩とは、どんな関係なんですか?」
「ん〜、どんな関係だと思う?」
経杜の質問にからかうように、笑って聞き返す。
それに
「えっ、………」
と経杜は動揺した表情を浮かべる。その表情を見ながら楽しそうに莉未は笑いながら、
「友達、だよ。ただの。先輩の友達だったから、仲良くなった、的な?」
「そそ、なーに動揺してんのかは知らんが、何もあるわけないだろ。」
それを聞いて、何処か安堵の表情を浮かべる。そんなに、僕に恋人でもいたら困るのか?
教室前に着き、そこまででは無いが少し並んでるので並ぶことにする。
「あら。すいません。待たせてしまって。」
「いーや、別にいいよ。な?」
「…………えっ!?あっ、はい。」
何かを考えていたのか心ここに在らずみたいな感じで、こっちの言葉に反応してきた。
そんな経杜に莉未が話しかける。
「私的には有難いけど、クラTにジャージの長ズボンで、この顔だと、性別わかんないか?」
「あ、はい………」
「安心して。生物学上は男だから。まぁ、心の性は女性だけど。あっ、これじゃあ安心……できないかな?まぁ、恋愛はする気ないし大丈夫だよ。」
「そ、そうなんですか………」
そう莉未が経杜に向けて言う。僕にも聞こえてはいるが、基本は経杜だけに向けた声量で、だ。
「と、いうか、普通にカミングアウトするんだな。」
「普通には……しませんけど、まぁ大丈夫だろうなって。」
「んあ?僕のダチだからか?」
「まぁ、それもあるとは言っときますけど、そうじゃなくて、季応君は理解してると思うので。」
「ふぅーん。そっか。」
ちらっと、経杜の顔を見るとまぁ、不思議がったり怪訝そうにしたりとかそんなことはなさそうだった。
そうしていると、僕らの番になり莉未に送り出される。
「それでは、楽しんでください。」
◇ ◇ ◇
お昼の焼きそばを買いつつ、1回の休憩室になっている教室に行き、昼食をとる。
「上手いか?」
勢いよく、麺をすする経杜にそう尋ねるともぐもぐしながら、こくこくと頷く。
俺も、焼きそばを口に運び味わう。うん、昨日の評価通り上手い。ソースの味付けが丁度いいし、具材もいい感じに引き立てている。昨日は物珍しさでキッチンカーでやってきてたケバブにしたが、生徒組のも上手いな。まぁ、ケバブも美味かったが。
ここは玄関から1番近い飲食スペースということもあり、多くの生徒などがやってくる。僕らは、食べ終わると教室を出た。
「この後はどうするんだ?僕はそろそろシフトだから準備しなきゃ。」
昨日から、ひとつずらした最終で今日はシフトを入れてもらっている。今は第3シフト。最終、第4はまもなくなので、メイクやらの準備をしなきゃいけない。そのためにお昼も11時半にとったし。
「もうちょっと回りたかったんですけど……」
「ん〜、まぁ、僕はいいけど一緒には難しいかな。」
「そう、ですか……」
通行の邪魔になるといけないので、中央階段の所で端により、話をする。
「どうしました?」
上から降りてきて、僕らを見つけ話しかけてきたのは莉未だった。あの後、シフトとかで、別れたんだが、時間的には終わったのか?
こちらに来た莉未に事情を説明する。
「ふーん。まぁ、私は暇ですけど、季応君は、雫葉先輩と一緒に行動したいでしょ?」
「っ、はい!」
そう力強く答えられ、嬉しさで笑みがこぼれてしまう。
「うーん……あっ、雫葉先輩はこの後シフトですよね?」
「1時からな。」
「私も見てないので、一緒に見に行きますね?」
「来ないでくれ、頼むから。」
そんな姿、見せたいなんて思わない。というか、あんな堂々と着たまま校内を回ってた悠華の方が凄いがな。
「季応君も、見たい、よね?」
「はい!きっと、とってもとっても可愛いと思います。」
そこまで言われると、嬉しいってか恥ずかしい。
というかなんか、
「莉未、キャラ変した?そんな、からかう系キャラだっけ?」
「いえ、ただ、後輩?になるんですよね?が、出来たのが嬉しいだけです。今まで基本末っ子立ち位置が多かったので。まぁ、それが無くなるのも寂しいですが。」
「なるほど。ま、なら仕方ないか。確かに、先輩にはなるな。」
「です、ね。よろしくお願いします、紫乃也先輩。」
先輩呼びされ嬉しそうにしながら、
「苗字呼びはなんか違和感あるし、名前でいいよ。」
「はい。」
とりあえず、どうするか保留にしつつ上に行くことにする。どうやら、月輝が昼飯も食わず寝てるとかで、視聴覚に向かうことにした。
「店が繁忙期なのか?」
「いえ、違うらしいです。まぁ、詳しくは知りませんが。」
「お前でも知らんのか。」
「表面だけの付き合いって、言うと言い方悪いですけど。基本、自分から言わないことには相手の心に踏み入れないようにしてるんで、お互い。」
「へぇー、意外。なんでも話してるものかと。」
「実は違うんですよ。」
そんなことを話しながら、階段を登って行った。




