第12話ー②
「遥真君、ちょっといい?」
少し空気も悪くなったかと思った頃、調理班の1人がやってきて、俺を呼ぶ。
「なに?」
「あー、私の友達が遥真君を呼んできて欲しいって。外の体育館入口に来て欲しいって。」
「そんなこと言われても、すぅー…………調理があるし……」
「いいから。絶対行ってあげて。」
そう強く念押しされて少したじろいでしまう。
俺も漫画とか小説の鈍感系主人公でないのだから確定ではないとはいえ、告白イベントの可能性がある。だから避けたいんだ。出来れば気付かないふりして。
だけども、どうやら今回はそうも行かないらしい。周りの女子の圧というか、そんなのに押されて行くことになってしまった。つまりは、俺の予想が当たってるってことだろうけど。
◇ ◇ ◇
体育館の外の入口というと、正直いって目立つようなところじゃない。普段、使うのも部活の人や、何かの集まりで保護者が来た時ぐらい。近くにはテニスコートがある。近くまで屋台はあるが、そこはちょうど並んでいる屋台を曲がった日当たりもほどほどな場所。雰囲気だけなら、漫画とかの校舎裏の告白シーンみたいな雰囲気がある。
今回、俺は相手のことを何一つ知らない。知っているのは、女性だってことぐらい。
その場所に向かうと、既に俺を呼び出した御相手が待っていた。相手が喋り出すのを待つ。
「…………来てくれて、ありが、とう………」
「冷たい言い方かもしれないが、名前を教えてくれない。俺は、君のこと知らないわけだし。」
相手の頬は赤く染まり、それがこの後に何を言うのかを明確に表している。
逃れられないよなぁ。
「隣のクラスの、樋口 葵って言います。あの、その………」
俯きながら、必死に言葉を出そうとする。
どうやったら後腐れなく断れるだろうか、なんだったら逃げれるだろうか。そんなことばかり考えてしまう。
「…………す、好きです。あ、えっと……私と付き合ってください!」
「………気持ちはありがたく受け取っとく。ただ、今は恋愛は遠慮中だから。ごめんね。勇気出して言ってくれてありがとう。」
「………こちらこそ、聞いてくれて、ありがとう、ござい、ます。」
そう言って、早足で下を向きながら俺の横を通り過ぎていく。それを見届けて、俺は壁に寄りかかった。
「ふぅー…………………」
こうゆうのは気を使うというか、精神がすり減るな。はは。
そのまま、力なく座り込み、秋晴れの空を見る。
疲れたのは、きっと申し訳なさと恐怖と平静をよそったから。ドキドキなんてしてなくて、調子のいい言葉を並べたがそれは1割も本音では無い。だから、疲れた。
そのまま、顔をあげてぼーっとしていると急に俺の前が陰り、手が伸びてきた。よく顔を見ると、空優だった。その伸ばされた右手には水のペットボトルが差し出されていた。
俺は、それを受け取り、ありがとう、と呟く。そして、空優の後ろからもう1つ人影が現れた。
「お疲れ様。」
そう言ってきたのは、美桜菜だった。なんか、久しぶりに見た気がする。てか………
「何故、2人はここに?」
「あ、私は、あの後、ついでに休憩取れって、言われ、て。それを、月輝君にも、伝えるように、言われ……」
「で、私がたまたま遭遇してね。ここに来たわけ。私が水を差し入れるようにアドバイスしたのよ。」
「はぁ………お前の入れ知恵か。」
「あら酷い言い方。」
「ま、ありがと。」
助かったことは確かだし、お礼は言っておく。キャップを開け、水を飲む。冷たい水が少し心を落ち着かせた。
「ここまで、酷いとは思わなかったなぁ。確かにあれはトラウマだったけど……告白されて、倒れるなんてね。相当おをひいてたのかも。」
「そりゃそうよ。私の時も、気づいてなかったかもだけど、顔は調子悪そうだったわよ?私の時は、嘘偽りの告白だったけど、今回は純粋な好きだもの。より、刺激したのかもね。」
「有り得る、な。」
相変わらず、美桜菜の洞察力には目を見張るものがある。これは、天性の才能ってやつなのかな。上に将来立つものとしての。
「しばらく、休んで、ください。何かあれば、私、ヘルプ行くので。」
「だな。悪い。しばらく、調理は任せる。」
「はい。」
話していて、少しは落ち着いて来たのでこんなところに座ってるのもあれだということで、立ち上がり移動する。
とりあえず、視聴覚室に行き、ゆっくりとすることにした。
「ありがと。あとは大丈夫。」
「まぁ、私も今は暇だから少しは付き合ってあげるわ。」
「わ、私も。」
◇ ◇ ◇
連絡が来て、空優は調理班のヘルプに向かう。
「大変そう。よほど、なんですね…………」
これじゃ………という考えが頭をよぎり、何故だかは分からないが、振りほどいた方がいい気がし、頭を軽く振ってその考えを振りほどく。なにが、これじゃ……なのか分からず自分のことながら不審に思いつつ、調理室へと向かった。




