第7話ー④
「やっと………買えた…………」
「案外、長かった、ですね。」
やっと買うことのできたカステラを持ちながら、レストランの入っているビルに向かう。行列はそこそこだったが、その場で食べる人には出来たてを、といったスタンスのため、長くなってしまった。というか、俺らの前がそうゆう人達が多かった。
「付き合ってくれて、ありがとう、ございます。」
「全然いいよ。それよりもちょっと急ごっか。」
「そう、ですね。あと、5、4分ぐらいですかね?」
「そうだな。説明はしてくれてるから大丈夫だろうけど。」
スマホで少し時間を確認してから、少し小走りで急ぐ。動きづらいな………浴衣だっていうのと人混みのせいだな。ま、このまま行けばなんとか間に合う、かな?
と、その時だった。
「うわ、おっとっと……………」
「っ………大丈夫か?」
危ねぇー、危機一髪。おそらくつまづいたであろう、空優の左腕を掴み、そのまま左足を前に出して強く踏み込みながら、右手も掴み真っ直ぐになるようにする。ふー………よろけただけだったから良かった。
「あ、ありがとう、ございます。」
「いや、受け止められたのが奇跡だから。それよりも他は大丈夫?」
「はい。特に、怪我は、ない、です。」
なら良かった。一応気にかけながら急ぐことにする。あー、もう少し運動神経と体力あった方が良かったかな。結構ギリギリだった。少し、顔赤い気がするが本人が大丈夫と言ってるから大丈夫だろう。
程なくしてビルに着き、エレベーターでレストランのある、5階についた。レストランはエレベーターを降りてすぐの所にある。中に入ると白を基調としたシンプルでありながら高級感も漂う内装になっている。
「はぁ……………………………」
ははっ、空優も流石に言葉を失っているな。俺だって、去年はそうだったし、なんだったら今年は叔父さんは仕事でいない。2回目でも緊張はする。
そんな空優を横目に受付に行く。
「ご予約はされておりますか?」
「あっ、はい。紅里で予約されているはずですが。」
「少々お待ちください。………はい。7名様ですね。既に5人きていらっしゃいますので、最後の2人になりますか?」
「はい。」
「かしこまりました。お席へご案内します。」
店員に案内されたのは窓側の大人数用の席。既に皆の元には飲み物と軽い料理がきていた。
「綺麗です、ね………」
「去年よりいい席なんじゃないか?」
「この大人数だもの。だから叔父上はこの席を予約したんだと思うわ。」
「なるほど。」
窓からはお祭り会場を一望することができる。花火まではあと5分ぐらいか。
「はぁー、凄いなぁ……………慣れないよ、まだ。」
「です、ね。一生のうちに、こんな経験、するなんて、思いません、でした。」
「誰も思いませんよ。価値観壊れそうです。」
皆さすがに慣れないよな。俺ですら、まだ緊張してるんだもん。日花光はそんな様子はないが無邪気さ故、かな?ていうか、音露も落ち着いてるな。
「ん?そんなことないけど。僕は一番乗りだったからね。多少飲み込めてるだけ。」
「にしては、溶け込めてるけど……………………………」
そう言いながら、リンゴサイダーを煽る、音露。……………………ワインじゃないよな?なんか雰囲気がそう見えちゃうんだけど。なんかあれだな。結構チャラさが無く見えるけど、いいのかな?あっ、そろそろだな。
「えっ、もうちょっとで花火?やったーーー!!」
「あと、1分ぐらいですね」
時計を確認しながら莉未が言う。もうそんな時間か。結構俺と空優はギリギリだったな。
楽しみだねとかなんとか話していると、急に辺りが眩しくなり、その後ドンという音が鳴り響いた。
「おーー上がった、上がった。」
「たーまやー!!凄い、綺麗だよ、お兄ちゃん。」
「おー、立派。」
間髪入れずに連続して、赤や青、緑などの色とりどりの花火が大小様々打ち上がる。こりゃぁ、絶景だなぁ。
「今年も綺麗ねぇ。」
「久しぶりの花火だぁー、たーまやー!!」
「確かに、いい、場所、ですね。」
「たーまやー、かーぎやー、でしたよね。」
各々がそれぞれの感想の声をあげる。いやー、でも相変わらずこの辺りで1番大きい花火大会は伊達じゃないな。去年よりも凄い気がするし……………皆で見るのもいいな。
「ねぇねぇ、そう言えばたーまやーとかってなに?」
「日花光君、それはね江戸時代に『鍵屋』、『玉屋』っていう大きい花火屋があってそれが由来になっているのよ。」
「へー、初めて知った!教えてくれてありがとう、美桜菜お姉ちゃん。」
日花光の質問に対する美桜菜の回答に、悠華も感心の声をあげる。いや、わりとテレビでもきてたりするから知ってるだろ。
というか、この花火を見ているともう夏が終わるなと実感する。今年は去年よりも濃かったな。
「そうねぇ、去年は3人だったけど同級生に月輝君のバイトの後輩に、大人数になったものね。」
「おかげであきが来なかったな。ずっと楽しかった。」
「そうね。」
花火を見ながら、そんなことを話していた。
その後も美しい花火を見ながら雑談をしているとあっという間に1時間の打ち上げ時間は過ぎていった。
「あっという間だったねぇ。」
「です、ね。」
「初めて生で花火見ました。」
各々が感想の声をあげる。流石、って所かな。ここいら辺で1番大きい花火大会だし、わりと全国的に有名だからな。2回目でも感動するもんだなぁ。
その4日後海の家の手伝いは終わり、帰る日になった。来年は来れないと思うけど、また皆で行きたいなと心から思えた。




