第6話ー④
微妙に長くなってしまいました………
「あー、疲れたー………………」
「僕も、大変だって聞いてたけど、予想以上。」
悠華と音露はそう言いながら、それぞれ机に突っ伏している。
そろそろバイトも終盤に入ってきて、大変さが増してきていた。去年で慣れている俺と、昔から手伝っている美桜菜は疲れはしているが、と言ったところである。
しっかしあれだな、人が増えるとナンパも増える。うちの女子達も、もれなく全員声掛けられてたな。
「うぇー、純粋にやだったんだから、思い出させないでよ。」
「私が声かけられたのは、驚きました。嫌、でしたけど。」
「まさか、私まで犠牲になるとは思いませんでした。なんとも言えない気持ちです。先輩方に助けてもらえて良かったです。」
そう三者三様の反応が返ってくる中、美桜菜だけは慣れた様子である。それもそのはず、ここで手伝いして、長いからである。別に、嫌というわけではないが慣れてはいるらしい。
でも確かに、莉未がナンパされている時は驚いたな………………。可愛いが、本人も困惑してたし、もちろん俺らも困惑したもんな。気持ちが女の子で、女の子になりたいって本人は言ってても生物学的には男だもんな。
「よし、今日の仕事も終わりだし、そこのコンビニ行って花火買ってまたやろうぜ。」
そう急に机に突っ伏していた体を起こした音露が言うが、皆一斉に、いやいやいや、と反論する。
「前回やったの3日前なんだけど。それに今日は疲れてそんな気力ないし。」
「そう、ですね。私も、流石に………」
「そんな〜……………………………………」
悠華と空優に正論とも言えるような反論を叩きつけられ弱々しくまた机に突っ伏す。そりゃそうだろうて。
「でも、なんかはしたいよね。2日後お祭りだけどさ。」
「かと言って何するかだよな。」
漠然と悩む机に突っ伏している2人。
いや、片付け手伝って欲しいな。そう思ってはいるが、注意するのも面倒なので何も言うまい。
「あっ、肝試し!」
「肝を試せるところなんてこの辺りないわよ。」
悠華が机から顔をあげて、閃いたとでも言わんとばかりにアイデアを言うが、悲しくも美桜菜に一蹴されてしまう。
確かにこの辺りで肝試しできそうな場所ないよな。雰囲気だけはもしかしたらあるのかもしれないが。伝説があるのはお祭りが行われる神社ぐらいだったはずだ。
あと夏定番のイベントってなにがあるだろう?スイカ割りもしたし。
何も思いつかんな……………
「この辺りで、なにか、できないんですか?」
「うーん…………叔父上の会社に言って星でも見ましょうか?」
「星!いい。大賛成、です。」
いつもよりも、身を乗り出して積極的に反応を示す、空優。
そういえば星が好きだったな。俺も見るのは好きだからいいな。
皆も別に問題が無いらしいので、美桜菜が叔父さんに連絡する。
「あー、うん。うん、わかったわ。うん、待ってる。はーい。」
慣れた動きで、美桜菜は連絡を済ます。
「そのまま、屋上でバーベキューすることになったわ。迎えをすぐよこすとも言っていたわ。」
「「えっ、やったー!バーベキュー!!」」
バーベキューに反応し、即座に上半身を起こす、机に突っ伏している2人組。
欲望に素直かよ……………
その大声に反応し、奥で疲れて寝ていた日花光も起きてきた。ちょうど良かったな、起こそうと思ってたし。ちなみに、バーベキューと聞いて、大喜びしていた。
そんなこんなしているうちに、迎えの車…………と言うかリムジンがきた。はぁ、流石に俺も含め皆少し慣れたよ。
15分ぐらい車を走らせると、狐遊市の中でも中心の方、ビルやマンションなどが多く建ち並ぶ所にやってきた。
そのビル群の中の一つの地下駐車場に入っていく。
「えっ、ここってRe:Beautiful。嘘!」
「すごい、です。」
なんかよく分からないが盛り上がってるな。悠華と空優が声を出して驚いている。あっ、莉未もか。驚きで声が出ないだけで。
「えっ、あの〜Re:Beautifulって?」
「知らないの?!あー、でもしょうがないか。コスメのブランド。とりあえずここのを買っとけば安心って言われてる。値段はピンからキリまでだけど、普通に全部いい商品なんだよね。」
なるほどな、2年目なのに知らなかった……………
「と言ってもここは叔父上が2番目に起業した会社で社長は違う人よ。叔父上は会長。」
「そういうことだったんですね。」
納得した莉未が反応する。でも、驚きは隠せないみたい。
そのまま中に入り、案内されるままにエレベーターで最上階まで行き、そこから非常用階段で屋上へと出る。
「おー、高っ!」
「そりゃ、確か14階建てだもんな。それなりに高いだろうよ。」
「あの別荘はもうちょっと上にあるわよ、ここよりも。」
その言葉に、音露は思わず苦笑いになってしまう。
そんなやり取りをしているうちに、日花光はバーベキューの方に走って行ってしまった。まぁ、悠華が着いてったから大丈夫だろ。面倒見てくれるなんて優し…………いや、ただバーベキューが楽しみなだけかもしれない。
そんなことを思ったが、とりあえず口に出さないことにしてバーベキューに向かった。
「なんか、わざわざすみません。花火の時もそうでしたけど。」
「はっはっは、いやいや気にすることないよ。じつに青春じゃないか。」
そう豪快に笑いながら言う。でも、一緒に背中バンバン叩くのやめていただきたい。痛い…………
なんとか解放され、皆の元へと向かうと既に皆、肉を持っていた。ただ、美桜菜は野菜だったが。
実際に星を見てるのは、空優だけだった。まぁ、空優も食べながら、ではあるが。
俺も、とりあえず肉と野菜のミックスの串を受け取り、空優の所に行った。
「星、見える?」
「案外、見えますよ。都会と言っても、空気が住んでいる、から、だと思います。」
言われて、空を見上げると綺麗な星空である。確かに結構はっきり見えるんだな。
少し黙って見るが、ずっと見ているというのも首への負荷が凄い。首を戻し、少し冷めたのを食べながら、柵の方に行き、柵に体をもたれかける。
屋上というのどうしても昔を思い出してしまう。でも、今はそこまで暗くもならないし深く思い出す訳でもない。騒がしいところだからかな。
なんかいいな、こういうわちゃわちゃしたの。
「おーい、月輝ー、まだまだあるぞ。ほら、食べろ。」
「はいはい、今行くよー。」
音露に誘われ、早足でバーベキューコンロの方に向かう。
と言っても結構減ってるんだけど…………俺の食べるもの残ってるか?まぁ、いいか。
適当に余ってる串を貰い、食べる。んまい。
「日花光、美味しいか?」
「うん、お兄ちゃん。」
「なら良かった。」
俺はそう笑顔で言いながら、日花光の頭を撫でる。
あれか、もう少しでこの夏の海の家バイトも終わりか。まぁ、明後日はお祭りがあるけど。
そう思いながら、夏の星空を見上げていた。
と言うか、この肉多分高級な奴だな、まじ、ん〜まいな。




