第5話ー③
それから、日が経ち、海に行く日の当日になった。
日花光と昨日までに準備は全て済ませ、約束の時間近くになったので、玄関に出て待つ。
「日花光、忘れ物ないか?」
「うん。大丈夫だよ、お兄ちゃん。でも、お盆、お母さんとお父さんが帰って来れないのは残念だなぁ。」
「そうだね。でも、もしかしたら、来年の3月か4月辺りには帰ってこれるって言ってたから。そのために今、頑張ってるんだし、待ってよう、ね?」
「うん。ちゃんと待ってる。」
そんないい子な日花光の頭を優しく撫でながら、リムジンを待つ。
程なくして、明らかに住宅街には不相応な大きな黒いリムジンがやってきた。
いや、凄いな……………、リムジンに詳しくないが、高そうだなぁと言うのは、見ただけでわかる。
えぇっと、個人宅組は俺がラストでこれから駅だよな。
そんなことを考えながら、目の前に止まるリムジンを見ていると、後ろの扉が開き、美桜菜が顔を覗かせ、笑顔で
「おはよう。さぁ、乗って。」
と言った。うん。正直、ビビってるわ。
隣を見ると日花光があまりの驚きにオドオドしてた。いや、気持ちはわかる。
「日花光大丈夫?」
「う、うん。乗ろうか、お兄ちゃん。」
「あぁ。」
リムジンの中に乗りこむと、俺も日花光もその中の広さに驚きを隠せなかった。
とりあえず、座るとふわふわとした椅子の座り心地が心地いい。高級だとはっきりと感じられる。
あれ?そう言えば……………
「叔父さんきてないの?」
「先に現地いるって。」
「なるほど。」
そんな話をしてると、リムジンが発進した。
確か、この後は駅だよな。
「おはよう、ござい、ます。凄い、でよね、これ。」
「おはよ。私も最初はびっくりしたよ。」
「おはよう。」
「おはよう、悠華お姉ちゃん、空優お姉ちゃん。」
笑顔でちゃんと挨拶をした、日花光によくできたねと頭を撫ででやる。
謎の緊張するんだけど、こうゆう高級なのに慣れてないからだろうな。俺の家から、駅までは車で行くならさほど遠くはない。だいたい5分ぐらいなので、すぐに着いた。
駅にリムジンも違和感の塊だな。
そのおかげか、2人ともすぐに見つけられたらしい。
もちろん、俺と同じように驚いていたが。
2人が乗り込み、挨拶を一通り済ませているうちに、車は狐遊市に向けて、発進した。
「別荘に着いたら早く着替えたいです。仕方なく着ている服なので。」
「ちゃんと持ってきてるよ。」
「ありがとうございます。」
うんうん。流石にいつものメンバーが集まれば、リラックスもできるかな?
まぁ、このリムジンは流石になれないが。
「いやー、凄いね。これは想像以上だよ。」
「そう、ですね。美桜菜ちゃんを除くと、私が、最初ですけど、いまだに少しだけ、緊張しますよ。」
「私も叔父上が買った時に乗せてもらった時はものすごく驚いたわよ。叔父上の持ち物の中で1番金持ち感あるものかもね。」
そう苦笑いしながら、美桜菜が言う。
そんなふうに異常に豪華なリムジンの緊張を誤魔化すように俺らは色んな雑談をした。
ふと窓の外を見ると、青く輝く海が見えてきた。
「ふあーーー、私初めて来ましたけど綺麗ですね。」
「おー、来たか。1年ぶり、かな?」
皆が窓の外の景色に釘付けになっている中、ふと音露の方を見ると海を見てはいたがどこか遠い目をしていた。
そして、俺は聞き逃さなかった。音露が「帰ってきてしまった………か…………」と呟くのを。
そんな中、車は山道に入り少し登っていく。この車でも行けるんだな。
登っていくと、ものすごく開けたところに出た。
そして、そこには洋風のかなり大きい家、いや、洋館と言った方が正しいのかもしれない。そんな家が立っていた。そう、これこそが美桜菜の叔父さんの所有する別荘だ。
車が止まり、ドアが開く。
「……………これは、僕も想像してなかったよ。」
「私も、です。」
「別荘でこのレベルなんですか?」
「嘘…………でしょ…………」
初めて来た4人は、顎が外れるほどに驚いた顔をしていた。
まぁ、俺も驚いたよ、最初は。
「相変わらず、美桜菜お姉ちゃんの別荘大きいねぇ〜。」
「そうだね。正確には“美桜菜お姉ちゃんの叔父さんの”別荘だね。」
「はーい。」
こうゆうのはちゃんと訂正しとかないとね。
で、叔父さんは中かな?
「叔父さんは中?」
「ん〜、ちょっと待ってね?」
「了解。」
そう言うと美桜菜は運転手のところに向かった。
確か、あの人は叔父さんの会社の役員なんだっけ。大変だな。俺らの運転手しなくちゃいけないなんて。
「近くで急ぎの案件あったらしくて夕方頃に戻るらしいわよ。それまで中で自由にしていいらしいわ。」
「じゃあ、そう皆に伝えるよ。」
「頼んだわよ。」
俺は直ぐに皆にこのことを伝える。だが、どうやら気後れするらしい。
まぁ、わからなくはない。ここは俺が先行して入らないとな。
「お邪魔しまーす。」
俺が、荘厳な扉をゆっくりと開く。相変わらず、ちょっと重いんだよね、この扉。
俺が、中に入ると皆もおどおどしながら中に入ってきた。
「「お邪魔します。」」
そして、全員ため息交じりの驚きの声をあげた。
俺はそれをそりゃそうゆうリアクションするよなと、少し苦笑しながら聞いていた。




