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そうたつお兄ちゃん?
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「紀要を少し読ませてもらっていいですか」
「あ、はい。どうぞ」
それから宗旦狐は、適当に紀要を一冊手に取って閲覧席に座って読みふけってた。
あたし、特にすることもないから、渡辺先輩の私物の漫画を借りて読む。
そうやって、三十分くらい無言が続いた後、資料室の扉が鳴った。
「はい」
学生かな。
そう思ってたんだけど、扉を開けて顔を覗かせたのは、大きな荷物を持った制服姿の女子高生だった。
あれ、今日見学の予定なんかあったっけ。
女子高生はあたしと目が合うと軽く会釈して、中を伺う。
そして、宗旦狐が目に入るとすかさず、
「そうたつお兄ちゃん!!!」
鼓膜破れるんじゃねえかってくらいの大声でそう叫んだ。