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虎の威を借る狐?
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「朝倉、月川さんが思い通りにならないからって、美月ちゃんを持ち出すんじゃない。あの子がどういう子かわかってて言ってるなら、最低だぞ」
柳原先生!
あなたがメシアか!
いやでも、その美月ちゃんってどういう子なの。
なんでそんな、柳原先生まで危惧してんだろう。
「わかりました」
と、宗旦狐は意外にあっさりと身を引いた。
しかしその数分後、研究室の扉が叩かれる。
顔を出したのは、仏の北条先生だった。
意外な人物に、あたしたちは目を丸くする。
大旦那は上半身を起こした。
「北条先生、どうかされたんですか?」
「ああ、みなさんお揃いで。月川さん、今ちょっといいかな」
「どうされました?」
「いや、朝倉先生がね、資料室の資料について月川さんに紹介してもらいたいらしくてね。月川さんのことを一緒に探してたんだよ。お昼、もう終わったならちょっと紹介してもらえないかな。彼、紀要が読みたいんだって」
そう仰る仏の背後では、宗旦狐が静かに笑みを浮かべていた。
ふと、虎の威を借る狐という言葉を思い出す。