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仲良きことは美しきかな
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「酷いなあ、佐々木先生。扉開けっぱなしにして、人の悪口ですか」
びくうっ!
声がした方を向いたら、半開きになってる扉から顔覗かせてる宗旦狐がいた。
軽くホラーなんですけど。
「お前ね、ノックくらいしてから声かけなさい。じじいの心臓に悪い登場の仕方すんじゃないよ」
いや、あたしの心臓にも悪い。
大旦那は、特に気にした様子もなくソファに寝転びながら言い訳する。
「僕は悪口なんて言ってませんよ。過去の事実を述べただけだから」
「じゃあ、俺も先生の過去の事実を述べましょうか。あの頃の先生は、まだ家にご家族がいらっしゃって幸せそうでしたね」
「やめて」
お互いにお互いの弱みを握りあってるらしい。
うん、仲良きことは美しきかな。