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一発殴らせてもらお
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男は敵だ。
天敵だ。
異形のあたしを貶す存在であり、近くにいれば常に警戒しなければならない。
そのはず。
じゃあなんで、この宗旦狐はあたしなんかに好意を寄せるのか。
実は、男じゃないとか?
いや無理がある。
……そうだ、香水。
この人には彼女がいるはず。
なら、これはただ単にからかってるだけ?
もしそうなら、こんなに混乱したのが馬鹿みたいだ。
一発殴らせてもらお。
あたしと宗旦狐は、ひとまず近くのカフェに入った。
目の前の宗旦狐は、素知らぬ顔でホットコーヒーなんぞを飲んでる。
あたし、アイスティーの氷を凝視。
からかってるって可能性考えたら、だんだん落ち着いてきた。
「聞いていいですか」
「はい?」
「香水。なんで、匂い嗅いだだけで品名までわかるんですか」