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い、いつの間に
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振り返ると、宗旦狐と大旦那が立ってた。
その背後で、渡辺先輩が心配そうに様子を伺ってる。
先輩が宗旦狐と大旦那を呼んできたみたいだった。
「朝倉先生、でしたね。私が言っているそんな人間というのは、ガサツで人を気遣うことのできない人のことです。そんな人が、正社員としてやっていけるはずがありませんし、嫁の貰い手もあるわけがないでしょう」
「なるほど、確かに大河原先生の仰るとおり、月川さんはガサツで気遣いが苦手な人なのかもしれません」
……おい。
まあ、そうなんだけどな。
そうなんだけど!
「ですが、大河原先生は月川さんのことを本当に理解されてますか」
「どういう意味ですか」
宗旦狐、手に持ってた分厚い本を机の上に立てる。
……あれ、あたしの卒業制作!?
資料室に一冊置かせてもらってるやつだ。
い、いつの間に。