69/416
ぶちっ
69
「あなたって人は、まともに仕事もできないの!?」
「すみません」
今のは、あたしが悪い。
歴代の先輩方の卒論が、床一面に広がってる。
あたしは急いで卒論を拾った。
近くにいた先輩も、慌てて手伝ってくれる。
「すみませんすみませんって、本当に理解してるの!?これはあなたの先輩たちが、一生懸命書いた論文なの!あなたが書いた適当な長編小説より、ずっと価値のあるものなのよ!!」
適当……?
なんで、そんなこと言われなきゃなんないの。
あたしがどんな思いで、あれを書き上げたかも知らないくせに。
……ダメだ、これは仕事なんだ。
堪えろ。
「あら、なにか文句でもあるの?……全く、仕事上の上司に向かってそんな態度とるなんてーー」
「お里が知れるわね」
ぶちっ。