男友だちは一人
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「おめでとう、来年も今年と変わらずいい年になりますように」
皮肉たっぷりに祝った。
でも、花村は気づかなかったらしい。
素直に「ありがとー」とか言った。
『誕生日プレゼントにさ、眼鏡のいい人紹介してよー』
「それ、言う相手間違ってるよ。あたしの男友だち吉田しかいない」
『あれは?大学の先生の大旦那だっけ。その息子』
大旦那とは、大学で唯一あたしに構ってくれる中世文学専門の先生のことだった。
今年五十三歳のバツイチのおじさんだけど、ルックスがいいためなのか、あの適当なキャラがいいのか、大学生に人気の先生である。
なんであだ名が大旦那なのかは詳しく知らない。
その大旦那の息子は社会人で、娘は高校生だって聞いたことがある。
娘の話はよく聞くものの、息子の話は特に聞かない。
というか、
「あたしにそんな影響力ないから」
『えー、じゃあ先輩は?合コンよくやるって言ってたじゃん』
ああ、確かに先輩なら。
大学で同じ資料室で働いてる三年上の先輩は、先輩の友だち主催の合コンに行くって言ってた。
それならまだいいか。
「今度聞いてみるよ」
『やったー!絶対ね』
「うん。飲み会の報告待ってる」
『おっけー、またね』
そんなわけで、先輩に合コンのセッティングをお願いすることになったのだった。