前言撤回
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なんやかんやで解散する頃、花村は完全に泥酔していた。
あたし、途中からノンアルカクテルをこっそり頼んで泥酔回避。
「もお一軒いくのおおおおお!」
駅の改札前で、花村が叫びながら地団駄踏む。
「ただっこか!あたしゃ明日仕事なんだよ!」
明日は土曜だけど、フリーターに土日は休みと言う概念はない!
平日めっちゃ休んでるけど。
「そんじゃ、吉田。花村のこと頼むよ」
同じマンションだから、自動的に吉田に押し付ける運びとなる。
できることなら、あたしだって二人と同じバス乗って帰りたい。お家遠い。めんどい。
「ああ。それよりお前、気をつけろよ」
「あ?なにに?」
「その新しい先生だっけ。先生って職業でも、世の中色んな男がいるからな」
……うわあお、吉田さん、まさかあたしのこと心配してくれてる!?まじで!?
「吉田……お前いいやつだな」
「ああ、お前がウィンナーに加工されないように祈ってる」
「前言撤回」
どこの世の中にあたしをウィンナーに加工しようとする男がいるんだ馬鹿たれ!
「悠介ぇー!ねむーい!」
と、花村が吉田の腕に絡みついた。
花村のこういうところ、凄いと思う。
「へいへい。じゃ、またな」
「おやすみー」
そうして、あたしは一人、改札をくぐった。