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な る ほ ど
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「いや、ちょっと待て」
と、吉田。
珍しく、妙に真剣な顔してる。
「どうした吉田」
「その先生、お前の側に寄って匂いかんだだけでクロエのオードパルファムって品名まであてたのか?」
「うん」
宗旦狐は、クロエのオードパルファムって確かに言ってた。
それがどうしたんだろう。
「普通、男が女の使う香水の品名知ってるか?」
「知ってるんじゃない?これ結構有名な香水らしいし」
「有名な香水だろうが、その匂い知ってなけりゃ品名までわかんねえだろ」
なにが言いたいんだろう。
あたし、首を傾げる。
「だからつまり、その先生の近くでそれと同じ香水つけてる女がいるってことだ。それも、相当近しい間柄の。そうじゃなけりゃ、普通匂いと品名が一致したりしない」
な る ほ ど 。
ってことは、宗旦狐は彼女がいながら、あたしと二人で食事に行ったわけか。
まあ、お礼だったとしても宗旦狐の彼女が知ったらいい気はしないだろう。
なんとなく、めんどくさいことになりそうだから、大学では違う香水使お。
花村はあたしの手首持ったまま、再び机に突っ伏して喚いた。