こいつ……
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にも関わらず、あいつは自分から電話してきた。
こっちはあと数分後に送ろうとスタンバってたのに。
なんて奴。
でも出ちゃう。
「もしも……」
『なるみー?ちょっと聞いてよー!』
あー、これは、男だな。
もう、声のトーンでなんとなくわかっちゃう。
『男なんだけどさー!』
ですよねー。
『出会い系で知り合った人なんだけどさあ。あ、今回の出会い系は大丈夫、信用できるから』
あたしは、出会い系に偏見を持ってる。
もちろん、それで幸せになってる人はいるんだろうけど、ネットで会った人間と会おうとは到底思えない。
でもとりあえず、楽しそうだし話は聞こうじゃないの。
『今度、初めて飲みに行くことになったんだけどさあ、その店がホテル街に近くって!しかも店の内装も狭いの!信じられる?ありえないでしょー』
「やめときな。連れ込む気まんまんじゃん」
『でもさ、日本酒美味しそうなんだよね』
花村は部類の日本酒と眼鏡好きだ。
でもって絶賛恋人募集中。
今までも街コンに行ってみたり、アルバイト先の上司だったり、友だちからの紹介だったり、まあ、ありとあらゆる方法で出会いを求めてる。
でも、見た目が好みじゃなかったり、相手の生活が最低だったりして今に至る。
アパレル系の会社に勤めてて、見た目も普通に可愛い。
そんな必死にならなくてもいつかいい人が自然と現れる気もするのに、とも思う。
男が天敵のあたしにゃようわからん。
「どうしても会いたいんだったら、他の店提案したら?」
『相手に探してもらったのに申し訳ない』
「連れ込まれたいのか」
『他の店にしてもらう』
「ん、で、しぶったらやめときな」
『うん。あ、祝え。0時になったから」
こいつ……。