最早テンションがめんどくさい
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「失礼しまーす!お久しぶりです!」
「お邪魔しまーす」
と、佐々木親子の登場。
た、助かった。
大旦那とは何回か顔合わせてるけど、美月ちゃんはクリスマス以来だった。
「美月ちゃん、久しぶりだね!」
「夏花さん元気そうでよかったー!」
二人はなんかきゃっきゃうふふしてる。
あたし、それを横目に大旦那に近寄った。
「どうかしたんですか?」
「いやー……その、ね。ちょっと紀要を借りようと思って」
と、大旦那はきょろきょろと紀要を眺め出す。
ん?なんか歯切れ悪いな。
すると、今度は仏までやって来た。
仏が来るなんて珍しい。
あっ、そういえば、仏は今日で最後の授業だ。
「月川さん、お邪魔するよ」
「北条先生、後でご挨拶に伺おうと思ってました。今日で、授業最後ですよね」
「そうだね。まあ、まだ大学には来るけど」
「ひとまず、お疲れ様です。お世話になりました」
夏花先輩とあたし、頭を下げて挨拶する。
ほんっとうに、仏には在学中から現在に至るまでお世話になった。
三日後に北条先生の送別会控えてるから、まだ感傷に浸るのは早いんだろうけど。
「いやいや、佐々木くんに比べたら君たちなんて全然」
「……パパ、北条先生に何したの?」
美月ちゃん、紀要を眺めてた大旦那をじと目で見やる。
「特に佐々木くんが新人の時の飲み会は酷かったよ。私の家でうちの妻が快方したこともあったね」
「……はい、いろいろとお世話になりました……」
まじか。
大旦那、新人の時からだらしないな。
「佐々木先生、新人の頃からだらしなかったんですねー」
夏花先輩、直球すぎい!
「そうなんです。パパってほんっとだらしなくって。この間も久しぶりに家に行ってみたら、部屋中洗濯物だらけで……」
「佐々木くん、私でもそんなことしないよ」
「……すみません」
なんか、大旦那が可哀想になってきた。
と、続いて助け舟のごとく現れたのは、柳原先生だった。
「賑やかだな」
「柳原先生っ!めっちゃ会いたかったですー!」
柳原先生ともクリスマス以来初めて顔を合わせる。
あれからそんなに経ってないはずなのに、なんでこんな何年も会ってなかったような気がするんだろ。
「私なんかよりもっと会いたいであろう奴連れてきた。ほら」
と、柳原先生の後ろから、ひょっこり顔を出す宗旦狐。
「なるみさんっ……!」
「柳原先生、生き人形の話してくださいっ!あたし、実はずっとその話聞きたかったん……」
「なんで無視するんですか!?」
がしっと肩を掴まれた。
なんか、最早テンションがめんどくさい。