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ぜんっぜん気になんねえわー

402


病院に着いて、天真さんの病室へと向かう。

天真さんは、個室の白いベッドの上で眠っていた。


「顔色いいですね。安心しました」


と、ほのかさんはほっとした表情を見せた。

本当に、ちょっと頰小突いたら起きんじゃないかなって感じ。


「天真が目覚めたら、連絡をください。これ、俺の電話番号です」


宗旦狐はそう言って、メモをほのかさんに渡した。

それから、あたしと宗旦狐はほのかさんを置いて、病院を出る。


あたしは車に戻ってから、宗旦狐に遺書のことを聞いた。


「遺書、読みました?」


宗旦狐は、無言で頷く。

疲れてるのか、その横顔は少しやつれてるように見えた。


「……俺は、ずっと察していながら目を背けてきました。あとは、時間がなんとかしてくれると思っていたんです。でも、天真の時間は、あの頃から進んでなかったんですね」


宗旦狐は深く息をついた。


「今更、何を思ったところで仕方ないことなんでしょうが。ーー俺のこと、軽蔑しましたか?」


と、宗旦狐は諦めたような口調であたしに問いかけてくる。

その口調は、斎玄さんを彷彿とさせた。


「あたしが、あの遺書を読んで、まず思ったことを本音で言っていいですか?」


そう言うと、宗旦狐は少し悩みながらも頷いた。

あたし、容赦なく感想を吐きつける。


「『だから何?』って思いました」


案の定、宗旦狐はきょとんとした顔をした。


「自分の存在意義奪われて、好きだった女奪われて、それで、はい死にますって、夏目漱石のこころのKですか?悲劇の主人公気取りですか?あんな、小さい子が母親に言いつけるみたいなクソ遺書送りつけて、あたしにどうしてほしいんだって話ですよ」


あたしゃてめえのお母さんじゃねえんだよって感じ?


「ーー先生は先生の道を見つけた。誰もそれを責められる人なんていません。だから、軽蔑なんてしませんよ」


だって、先生の人生だもん。

それをどうこう言える人なんて誰もいるはずない。


「それに、先生が過去にさなえさんと同じ部屋で過ごしてたとしても、別にあたしは気にしません。高校生の男女が同じ部屋で何してたんだ?とか、そんな野暮なこと聞かないし、さなえさんのことほんとはどう思ってたのかとかも、ぜんっぜん知りたくありませんから」


うん、ぜんっぜん気になんねえわー。

高校生の男女が一つ屋根の下、夜何してたんだろうとか、ぜんっぜん気になんねえわー

どうせあれだろ?

トランプゲームとかだろ?

二人でババ抜きだろ?

それともあれか、テレビゲームとか?

いや、ぜんっぜん気になんねえんだけどねー!

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