父上の懺悔
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朝倉家に着いた途端、斎玄さんは車を飛び出した。
あたしも、それに続く。
「天真と宗辰はどこだ」
と、斎玄さんは出迎えた家のお手伝いさんに聞いた。
「さきほど、茶室へ向かってらっしゃいましたが」
その言葉を聞いて、斎玄さんは足早にあたしを茶室へ案内してくれる。
北側の見事な日本庭園の奥にある竹林。
その中に、茶室はひっそりと建っていた。
その茶室の姿が確認できると、斎玄さんは、
「月川さんは、念のためここで待っていてください」
と言って、あたしが反論する前に走って行ってしまう。
……裏側から様子見るくらいいいよね?
あたし、茶室の裏側にこっそり回る。
と、そこには大きな丸窓がついてて、ちょうどそこから中の様子が見られた。
暗くてよくわかんないけど、あの後ろ姿は天真さんかな。
女装してるけど骨格でわかる。
そんで、その向こう側に宗旦狐がいた。
……なんか、様子がおかしい。
宗旦狐、まるで幽霊でも見たかのような顔してる。
天真さんの体の位置が少しずれた。
その時、天真さんの手元にキラリと鋭い光を放つ物が見える。
あれは……刃物だ……!
「先生……!!」
あたしは、反射的に叫び声を上げ、茶室に駆け寄っていた。
「来るな!!」
宗旦狐が声を荒げる。
それとほぼ同時に、天真さんが刃物を両手で構えた。
いやだ……!!
あたしはとにかく天真さんを止めようと、一心不乱に丸窓へと駆け寄る。
天真さんはその両手を前に突き出し、大きな声を上げて宗旦狐に迫った。
ーードッ。
鈍い、音がした。
あたしは、丸窓に手をかけて、そのまま動けなくなる。
……いま、なにが、起きた?
天真さんが、よろよろと後退りする。
見えたのは、宗旦狐ではなく、斎玄さんの腹部に深々と突き刺さる刃物だった。
「父上っ!!」
宗旦狐が叫んだ。
「……天真……すまな、い」
斎玄さんの身体が、崩れるようにして倒れる。
あたしは、ようやく我に返って状況を把握した。
天真さんが迫った瞬間、這い入るようにして茶室に入った斎玄さんが、宗旦狐を庇って刺されたんだ。
天真さんの全身は尋常ではないほど震えている。
「父上!しっかりしてください!!父上!!」
宗旦狐が、叫びながら斎玄さんを支えていた。
あたし、頭の中パニック状態。
叫び声を上げることさえ忘れてた。
すると、天真さんは急にこっちに向ってきた。
それから、丸窓から外に出て、そのまま無言でどこかへ走り去ってしまう。
「なるみさん!救急車を呼んでください!」
……えっ、あ!
そうだ、救急車!
「よ、せ……!」
と、斎玄さんが宗旦狐の手を握った。
よ、よかった、まだ意識はあるみたい。
「死ぬつもりですか!?」
「……松永に……連絡を……」
まつなが、さん?
宗旦狐は一瞬戸惑ったものの、直ぐに自分の端末を取り出してその人に電話をした。