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請求記号908
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と、思ったら、いた。
請求番号908。
文学全集の棚の前に、背の高い男が立ってた。
後ろ向きだけど、眼鏡フレームが耳にかかってるのが見える。
男の棚の前には、分厚い芥川龍之介全集が並んでいた。
ふむ、なかなかいいセンスしてる。
あたし、ちょうど手に夏目漱石の全集持ってた。
どれどれ、配架ついでに顔をば拝見。
本を棚に戻しながら、そっと横目で顔を見る。
と、相手はすでにあたしのことを見てた。
ばっちり目が合ってしまう。
相手、目を丸くしてから満面の笑み。
あたし、全身の血の気が引いていく。
一瞬、意識が遠くなるのを感じた。
頼む、夢であってくれ。頼むから!!
しかし、本の重みは、無慈悲にもこれが現実であることをあたしに悟らせた。
なんでここにいるんだ、宗旦狐!!!