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壁とお友だちポジション

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宗旦狐がお風呂に入ってる間に、することがないから洗い物をした。


食器洗浄機があると楽なんだけど、残念ながらないから全部手洗い。

まあ、でもすることないから別にいいんだけど。


それにしても、結構料理余ったな。

明日も食べられそう。


部屋には、泡を流す水とテレビの音だけが響ていた。



………………唇が、まだ温い。


世の中の恋人たちって、まじであんなちゅーしてんの……?


え、やばない?やばいっしょ。

語彙力と表現力を抹殺されるくらいのちゅーだった。


同棲、軽くなめてたわ。

これ、あと数週間続くの?

この先心臓もつ自信ない。


項垂れてると、お風呂場の方から足音が聞こえてくる。


「ああ、洗ってくれたんですか」


と、シャンプーのいい匂いを纏わせた寝巻き姿の宗旦狐登場。


「特に、することなかったんで。ーーなにか飲みますか?」


「じゃあ、ビールを」


あたし、水を止めて冷蔵庫から缶ビールを取り出して手渡す。


「あんまり飲みすぎないでくださいね」


そう言うと、宗旦狐は色っぽい笑みを浮かべた。



「酔っ払ったら、なんでもありじゃないですか?」



………………っ。


「さ、最低!……さいっていっ!!!」


不覚にもドキッとしてしまったのは内緒で。

とにかく最低!!!


「今、結構間がありませんでした?」


「……ばか!先生そうやっていつも女の人口説いてたんでしょ!」


「だから、そんなことしたことないって……」


「嘘つき!酔ったふりして一気に仕留めてたんでしょ!けだもの!」


「落ちついてください。本当に、そんなことしたことないです。できることならしたかったです」


したかったんかい!


「なるみさん、男はみんなけだものです」


ぐっ……開き直りやがった。


「そんなことより、どうします?まだ十時ですけど」


……どうしますって言われても。

特に、することない。

クリスマスの夜に恋人がするであろうことは、あたしが止めたしね?


宗旦狐も同じこと思ったのか、苦笑してこう言う。


「寝ます?」


「……ですね」


恋人とか夫婦飛び越えて老夫婦かよ。

まあ、それもいいか。

もう、疲れたし。



洗い物を終えてリビングに戻ると、宗旦狐はソファで羽布団を広げて寝転んでた。


「先生、ソファで寝るんですか」


「はい。なるみさんはベッドで寝てください」


セミダブルのベッドを見ると、毛布が綺麗に敷かれてる。

いやいや、さすがにソファで数週間も羽布団だけで過ごすのは宗旦狐が辛いでしょ。


「悪いですよ。それに、それだけじゃ寒いでしょ」


「でも、布団はこれしかないんで」


「一緒にベッドで寝ます?」


あたしの質問に対して、宗旦狐は軽く三十秒くらい硬直してた。


「あたし、端っこで寝るし、寝相もそんな悪くないから、蹴ったりしないと思うんですけども」


結構勇気出して提案したんだけどな。

あ、宗旦狐、頭抱え込んじゃった。


「なるみさん……俺、男なんです」


絞り出した声は苦しそうだった。


「嫌ですか?」


「嫌じゃないですけど……あーもう!わかりました!一緒にベッドで寝ます!寝させて頂きます!!」


ええ?

なんでおこ??

嫌なの???


あたしは宗旦狐が缶ビール一気飲みしてる間に、ベッドに潜り込んで隅っこを陣取った。

名付けて壁とお友だちポジション。


「なるみさん、そんな寄らなくても大丈夫ですよ」


と、背後から声がかかると同時に羽布団がかけられる。


「いえ、仰向けに寝ると、先生ベッドから落ちるから」


「大丈夫ですって。ーー電気、消しますよ」


「あ、はい」


宗旦狐は電気を消すと、深く息を吐いてからベッドに入って来た。

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