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巧さんの過去の恋愛事情

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「巧さんはほら、もっと相応しい人がいますって」


うん、もっと可愛くてお洒落で日本酒好きの子とか。


花村さんお願い、喋って。


「……ありがとうございます」


「因みに、巧さんはどんな女の子が好みなんですか?」


お、あたしの質問に、花村がぴくって反応した。


「そういえば、巧くんが高校生の頃に付き合ってた彼女、よくクッキーとかケーキとか焼いて家に持って来てたよね」


「なにそれ僕知らないんだけど」


ああ、巧さん、頭抱え込んじゃった。

申し訳ねえ。


「クッキーとケーキ……だと……?」


花村、やっと声出したかと思えば、まるでこの世の終わりでも迎えたかのような顔してる。


「兄貴、甘い物苦手だってずっと言えなくて、結局思い切って打ち明けたら、彼女大泣きしちゃったんだよねー。それ以来、トラウマになってずっと彼女なし」


「美月!宗辰さんも、余計なこと言わないでください!」


巧さんってこんな取り乱すんだ。

いやあ、でも苦手なもの作り続けられてたらさすがに打ち明けたくなるって。

それはちょっと巧さん可哀想だわ。


「いや、あれは多分お菓子云々より、巧くんの彼女に対する態度の方が問題だったよ。『巧くんといても手も繋がない、会話もない、笑顔もない』って彼女泣いてたんだから」


「僕の息子、へたれだったの!?」


と、宗旦狐と大旦那がとどめを刺しに行く。

もうやめて差し上げろ!


「で、でも、巧さんは相手のことをきちんと思いやってるんだなって、うちはわかってますから!」


おお、ナイスフォローだ花村!

そして日本酒がぶ飲み。


「で、結局のところ巧くんはどんな子がいいの?」


柳原先生が振り出しに戻す。

巧さん、うーんと顔真っ赤にしながら考える。


「……お菓子以外の料理が上手い人」


「見た目は?」


「……そんな華美じゃない方が……いや、もう俺の話はいいですよ。ーーなるみさん、シチューおかわりしていいですか」


「あ、はいはい」


あたし、立ち上がって巧さんの皿を受け取る。

見たら、宗旦狐の皿も空だった。


「朝倉先生もおかわりしますか?」


「いえ、俺は唐揚げに専念します。店の唐揚げより美味いです」


うわ、はっや。

唐揚げもうほとんどない。


「うち、ロールキャベツおかわりしよー」


と、花村があたしの後に続いて台所にやってくる。

そして、あたしとの距離をぐっと縮めて腕を掴んだ。


「なるみ、頼む。今度料理教えて」


あたしの腕を掴む花村の手の力強さから、必死さが十分すぎるくらい伝わる。


「うん、協力する」


「ありがとう……!」


お菓子作りはあたしも苦手だけど、幸い巧さんは甘い物苦手らしいから、なんとかなりそう。


「じゃあ、まず包丁の持ち方から教えてね」


……なんとか……なるかな……。

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