今更のモテ期到来?
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四人用のダイニングテーブルの席に、宗旦狐、柳原先生、大旦那、巧さんが座り、あたしと花村と美月ちゃんはローテーブルで絨毯の上に座って頂くことになった。
あたし、ずっとなんで一人暮らしの部屋なのに、ダイニングテーブルと椅子四脚あるんだろうって不思議に思ってたんだけど、宗旦狐曰く、家具買うお金なくて困ってた学生の頃、大学の友人がくれた物らしい。
「椅子四脚も要らないから、こっちに引っ越す時に捨てようかとも思ったんですけど、役立ってよかったです」
ほんと、捨ててなくてよかった。
なかったら立食パーティ状態だったわ。
ビーフシチューとロールキャベツと唐揚げで立食パーティは流石に厳しいもんな。
ダイニングテーブルとローテーブルの上には、各々料理とグラスが用意されてる。
あたしは缶チューハイをグラスに注いだ。
「それじゃ、なるみさんお疲れ様でした。乾杯」
宗旦狐の掛け声で乾杯して、料理に口をつける。
うん、おいし。
「なるみさん、お料理上手なんですね。美味いです」
と、珍しく一番初めに巧さんが褒めてくれる。
「ありがとうございます。母の料理が美味しくて、勝手に覚えちゃうんですよね。……好きな料理ばっかり」
だから、レパートリーはとても少ない。
あたしが大学生になってからは、母も仕事が忙しくて滅多に料理しなくなったし、新規開拓するのもなんとなく怖くて、結局現状維持。
「巧くんも、料理が上手い子見つけないとね」
「……柳原さん、俺はまだ早いですよ」
「いや、早くないだろ。お前だって月川さんとそんなに歳変わらないんだから。あーあ、朝倉と月川さんがダメになったら、月川さんにこいつ押し付けようと思ってたのに」
「「げほっ」」
あたしと巧さん、大旦那の言葉を聞いてほぼ同時に噎せる。
「へえ、そんなこと考えてたんですねえ」
宗旦狐、目が笑ってない。
「美月も同じこと考えてたなあ。兄貴となるみさんがくっついて、お兄ちゃんと美月がくっつくの」
「み、美月ちゃんまで、そんな……ははは」
ちょっとちょっとちょっと!!
あたしの向かいの花村さんが!!
無言で怖いんでそろそろ話題変えてもらえませんか!!
「でもまあ、俺もそのつもりでした」
……は!?
なに言っちゃってんですか、巧さん!?
「宗辰さんがなるみさんのこと捨てるつもりなら、俺がーーいや、なんでもないです」
巧さん、耳まで真っ赤にしながら麦茶がぶ飲みする。
そんな巧さんの肩を、大旦那が同情するように叩いた。
「よかったね、月川さん。モテ期が来たよ」
柳原先生、赤ワイン片手にあたしのことからかう。
柳原先生と赤ワイン相性抜群かよ。
絵になりすぎだろ。
いや、そうじゃない。
今更モテ期来られても困るんですが。
「なるみさんは、巧くんだろうと誰だろうと渡さないよ」
と、宗旦狐、大人の余裕を見せつける。
別れ話するかもってなった時、電話口で「捨てないでください!」って騒いでた人とは思えない。
かと思えば、あたしの方向いて、
「絶対逃がしませんから」
……ガチトーンの声で言われた。
だから怖いってば。