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クリスマスなんてなかったんや

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早朝。


数週間ぶりに訪れた宗旦狐の部屋は、まるで本のために用意されたような部屋になってた。

台所やトイレ、洗面所に風呂場という水気のある場所以外の至るところに、何かしらの本が置いてある。

それは、近現代文学の全集であったり、或いは文学史に関する専門書であったり、もしやこれは貴重書では?と思うような古書であったり様々。


いや確かにあたしの部屋だって、人のことは言えないくらい、洋服だとか本とかゴミとか部屋中に散らばってるよ?


でも、ここまで部屋中に本が散らばってたり論文のコピーが散らばってたりしたら、さすがに片付けたくなる。


というか、ベッドとかソファにまで置かれてるんだけど、この人一体どこで寝てたんだ?


「先生、これはここでいいですか?」


「あ、はい。ーーすみません、クリスマスなのにこんなことさせてしまって」


「気にしないでください。先生の家でクリスマスやろうって言ったの、あたしですから」



一昨日。

親からの許可をもらい、正式に付き合うことが決定したはよかった。


そこからあの後、宗旦狐の提案で、あたし一人での外出は控えた方がいいって話になった。

朝倉家が何考えてるかわからないし、今度は誘拐だけでは済まないかもしれないからとのことだった。

そしたら母が、


「じゃあ、朝倉さんの家で同棲しちゃえば?」


とかなんとか軽いノリで仰ってくれまして。

まあ、その時の宗旦狐の嬉しそうな顔ったらない。

見えない尻尾ぶんぶん振ってきらっきらな目であたしのこと見て、


「しましょう!」


とか抜かしてくれちゃったもんだから、さあもう大変。

さすがに、父がまだ早いんじゃないかって言ったりして、ずっとではなく、今日から冬休みの間だけお試しって形に収まったんだけど。


いや、それでも今日から数週間、宗旦狐と同棲するとこには変わりないんだよな。

母曰く、


「あんた、宗辰さん逃したら後ないんだから、絶対逃すんじゃないわよ。最悪できてもいいから。ママ、孫大歓迎だから」


……あれが親の台詞かよ。


あたし、母の言葉思い出してため息をつく。

そのため息が、クリスマスに部屋の片付けを手伝わされてる現状に対するものと勘違いしたらしく、宗旦狐は本当に申し訳なさそうにまた謝った。



本日、クリスマス。

本当なら、読売ワールドのイルミネーション見に行く予定だったんだけど、朝倉家がごたついてるから、やっぱり遠出の外出は控えようってことになった。

でもって、そのごたつきのせいで、すっかりクリスマスプレゼントのことも互いに忘れてて、クリスマスとはなんぞや状態。

宗旦狐はそれに関しても罪悪感を覚えてるらしかった。


「ほんと、気にしないでください。それより、みんな来られてよかったですね。イルミネーション見るより、こっちのが楽しいですよ」


結局、今日は大旦那に巧さんに美月ちゃんに柳原先生に花村が宗旦狐の家に来ることになった。


なんでって、クリスマスに宗旦狐と二人で過ごすなんて、そんなことあたしにできるはずがない。

クリスマスと男と二人で過ごすって友だちから話を聞いただけで蕁麻疹出そうになってたのに、実際に自分がやってみるなんて、そんな自殺行為、あたしにゃできない。


ってことで、今日はみんなを宗旦狐の家に呼んでご飯とかケーキ食べる会になった。

プレゼントはくれぐれも持ってくるなってみんなに釘さしといたし。

うん、今日はクリスマスじゃない。

あたしらにゃあ、クリスマスなんてなかったんや。

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