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三人称

333


ーーーーーー


十八時三十分。


宗辰は時間ぴったりに駅に着いた。

車で迎えに行ったものの、駅にはなるみはおろか待ち人一人いない。


近くの駐車場に車を停めて、なるみに電話をするも、出ることはなかった。


メールを打って、ひとまず三十分は待った。

が、当たり前のように音信不通。

既読すらつかなかった。


ーー嫌な予感しかしない。


宗辰は自分の予感は十中八九当たることを知っていた。

渋い顔をして、佐々木に電話する。


『はい?』


「佐々木先生、今大学にいますか」


『いるよ!飲みに行くのっ?』


なんでそんな嬉しそうなんだろう。

宗辰は訝しみつつ、ばっさり否定した。


「違います。なるみさんがまだ資料室にいるか確認してもらえますか」


『あのね、恩師に使い走りさせるって……』


「お願いします。緊急事態なんです」


宗辰の切羽詰まった声に、佐々木もただ事ではないことを察したらしい。


『月川さん、どうかしたの?』


研究室を出て資料室を確認しに行く音がする。

口調もさっきとは違い、真剣なものになっていた。


「約束の時間になっても来ないんです。電話もメールも応答がありません」


『……そりゃ、ちょっとまずいかもね』


「なにがまずいんですか?」


『あの子、三連続で駅でぼおっとして転んで怪我したって言ってて、今日も足引きずってたんだよ。おかしいでしょ、三回も転ぶって』


それは、おかしい。

大の大人が、普通そんな頻繁に駅で転んだりしないだろう。

もし、誰かに突き飛ばされてたんだとしたら……。


『資料室にはいないよ』


「わかりました。ありがとうございます」


早口で礼を述べ、即座に電話を切った。


宗辰には、なるみに危害を加えるような人間に心当たりがあった。

その心当たりの人間から、メールが届く。

送信者は、天真だった。


『なるみさんを預かりました』


その短文と共に送られてきた写真には、手足を縛られ、布を口に噛まされたなるみの姿が映っていた。


「くそっ……!」


なぜ、もっと早く朝倉家がなるみに接触してることに気づけなかったんだろうか。


宗辰は悔しさと自分への苛立ちから、奥歯を噛み締めた。

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