大して興味なさそうにお聞きなさる
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「こんばんは。お待たせしました」
と、お店の人に案内されて巧さんが到着。
それまで暴れてた花村、一瞬にして同一人物かと疑うくらいのお淑やかな笑みを浮かべた。
「巧さん、お仕事お疲れ様でした。隣、座ってください。なに飲まれますか?」
「ありがとうございます。生、頂きます」
「俺も生で」
「あたし、カシオレ」
「じゃあ、うちもカシオレにしよー」
え?久保田は?
そう思ったけど、言わなかった。
花村は部屋の前を通りかかった店員さんを呼び止める。
「生二つとカシオレ二つと、久保田のこれ冷酒で」
頼むのかよ!
「ここ、日本酒がいろいろ置いてあるらしいんです。巧さん、日本酒はお好きですか?」
「あまり飲んだことはないです」
「あ、じゃあ、あとで少しあげますねっ」
……少し……あげる?
それって間接ちゅ……いやもう考えるのやめた。
そんなことより、隣で日本酒のメニュー見てる宗旦狐の方が気になる。
「先生は日本酒、飲み過ぎたらだめですよ」
あたしが横目で少し睨むと、宗旦狐は苦笑を浮かべながら頷いた。
その様子を、巧さんが怪訝そうに見てた。
「宗辰さん、そんなに酒弱くないですよね」
「大学の先生にザルがいて、その人に潰されてからはそんなに飲まなくなったんだ」
宗旦狐にとってもあれはトラウマらしい。
まあ、仏についていこうとする方が命知らずってもんだ。
「なにか、酔っ払ってなるみにやらかしちゃったんですか?」
「駅のホームから電車が線路に落ちかけたところを、なるみさんに助けてもらいました。なるみさんがいなければ確実に死んでましたね」
明るい笑顔で「死んでましたね」じゃない。
ほんとに死んでたわ。
「なにそれ、うち聞いてない」
「ほら、あのクソ男どもとの合コンの帰り道」
「合コン?俺聞いてませんよ」
うぎゃああ、めんどくせええ!!
あたし、目線で巧さんに助けを求めた。
「それより、宗辰さんとなるみさんがお付き合いを始めたと美月から聞きましたが」
うわ、大して興味なさそうにお聞きなさる。
でも話題が逸れたからいいや。
「そう、それ!いつの間にそうなった!?」
「それは、俺から説明しますね」
そう、宗旦狐が前置きしたとき、ちょうどお酒が運ばれてきた。




