もはや疲れた
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「ごほん。イチャついてるとこ悪いけど、場所決まったから行くぞそこのバカップル」
と、花村があたしの肩を叩いた。
うわあ、他人からでもそう見えるんだ。
あたしは手を振って宗旦狐の手を振りほどこうとする。
が、なかなか取れない。
「よく決まったね?」
今日金曜だから、どこも混んでるかと思った。
「もともと予約してたお店、四人用個室だったの。そこにねじ込んでもらえたから」
花村さん、さすがっす。
てか、宗旦狐はそろそろ手を放していただきたい。
周りに大学関係者いないだろうな。
花村の後をついて行きながら、宗旦狐はあたしの手握りながらご機嫌そうに聞く。
「その店、二人用の個室あります?」
「それ、聞く必要ないですよね?」
「ありますよ、なるみさんが気に入った料理があればまた行けるじゃないですか」
「個室である必要がどこにあるんですか!あと、人の手をもみもみすんな!」
「すみません、柔らかくてつい」
「肉厚って言いてえのか?あ?」
と、宗旦狐と言い合ってると、前方の花村が突然両手で顔を覆いだした。
肩が小刻みに揺れてる。
「どうした、花村。気分悪い?」
「う……う……」
「う?」
「羨ましいんじゃボケカスバカップルがあ!!お前ら爆ぜろ!!末長く爆発しろ!!……くっそおおお!今なら誰とでも付き合ってやんよ!!どっからでもかかって来いや!!」
「落ち着け、花村!自分を安売りしたらいかん!」
「あはは。仲良しですね」
仲良しですねじゃねえんだよ!!
半分はお前の責任だろうが!!
「ほら、お店行こう、お店。美味しい日本酒あるかなー?あ、巧さん、日本酒好きかもよー?」
あたし、花村の肩抱いて落ち着かせる。
花村は泣き真似しながら頷いた。
「……うん、日本酒、飲む……」
「よーし、じゃあ案内しておくれ?」
なんで店に辿り着く前にこんな疲れてんだろう、あたし。