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でも好き
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「だったら、先生だって今、あたしに呪いかけたことになりますよ。きっとあたしは、これから起きる災厄を全部呪いのせいだって思います。それで、罪悪感に苛まれるんです。先生が呪いなんて言わなければ平和に過ごせたのに!」
こうなりゃ道連れじゃ。
そんな必死の思いも読まれたのか、柳原先生はふんっと鼻で笑う。
「だから言っただろうが。呪いは、怨恨やらそういう負の感情が機動力になったときに成立するんだ。私は月川さんを案じて親切心で忠告してやったんだ。感謝してほしいね」
「じゃあ、助けてくださいよ」
「あいにく人を救えるような祈祷師ではないからな。私はただの、手相占いについて少し詳しい妖怪じじいだ。自分でなんとかしなさい」
そう言って、愉快そうにコーヒーを飲んだ。
なんて人だろう。
でも好き。
そろそろ三限の授業が終わる。
残念だけど、お暇しなきゃ。
あーあ、あと数時間なにで暇潰そう。
そんなことを考えながら、あたしが腰を上げかけたとき。
非常勤講師控え室の扉が鳴った。