こっちの方が楽しいや
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美月ちゃんと宗旦狐、並びに大旦那と柳原先生ご一行だった。
「あ……」
美月ちゃんは小さく声を上げてから、口に手を当てた。
その美月ちゃんの目を大旦那が塞ぎ、柳原先生はなぜかその大旦那の目を塞ぐ。
宗旦狐はこっち見ながら、笑顔をびきびきと引きつらせてた。
桜花さんの視覚からは、その四人は見えない。
でも、視線からなにかを感じ取ったらしい。
顔を青くして硬直した。
「俺の彼女になにしやがってるんですかねえ?」
宗旦狐、指をばきぼきと鳴らしながら桜花さんの背後に寄る。
おお、兄弟喧嘩って初めて見る!
桜花さんはあたしの頰に触れてた手を引っ込めて、振り返った。
「あ、兄上、これは誤解。ほんと、誤解なんです」
桜花さんって、宗旦狐のこと兄上って呼んでんの?
しかも敬語?
え、なにそれかっこいい。
あたしも妹から姉上って呼ばれたいし、敬語使われたい。
「そもそも、お前はなにをしにここに来てやがるんですか」
宗旦狐、なんか日本語がおかしいことになっちゃってる。
「それはもちろん、佐々木先生に……ねえ?」
「僕、あの一回しか呼んでないよ」
大旦那、柳原先生に目を塞がれたままあっさりと桜花さんのこと裏切った。
「佐々木先生ったら酷いわ!!そうやってわたしのこといつも弄んで!!」
と、今度な柳原先生が口元に手を当てて驚愕の表情で大旦那を見る。
「佐々木……お前、前々からクソだとは思ってたがそこまでだったのか」
「違うから!あれ、男だから!朝倉の弟!」
「女だけでなく男までも……」
「パパさいてー」
なんか、色んなところで修羅場ってる。
でも、賑やかだからいっか。
やっぱ、こっちの方が楽しいや。