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きっと、楽しく生きてみせるから

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「昨日なるみさんが言ってた一緒に背負わせてくれって、結婚を前提にお付き合いしてくださいって意味だと思ってました」


宗旦狐は室内にいるのにマフラー首に巻いて、もふもふるんるんしてる。

なんだこいつ可愛い。


……じゃなくって、結婚を前提にお付き合い!?


あたし、酸欠の金魚みたいにぱくぱく口を開閉する。


「違いましたか」


途端、宗旦狐は見るからにしゅんと目を伏せた。


「違わない!……かも……多分……」


た、確かに昨日申し上げましたよ!!

宗旦狐のそばで力になりたいって思ったから!!

でも!!

結婚を前提にお付き合いとか、そんな恐れ多いこと考えてたわけじゃなくって!!


ーーでも、そばで力になりたいって、つまり、そういうことだよな。


自分からそんな告白したとか、認めたくないよお。

第一なんであたしみたいなデブスが、宗旦狐にそんな恐れ多いこと言えるんだよお。


ぐぬぬぬ、と頭抱えるあたし。


と、宗旦狐、マフラーを外して立ち上がったかと思えば、あたしの目の前にきて目線を合わせた。



「それじゃあ、俺と結婚を前提に付き合ってください」



あたしは、優しいけど真っ直ぐとした目から、視線が離せなかった。


「俺は、やっぱりなるみさんがずっと好きでした。ーー前に公園で会った時、俺はなるみさんが好きだって言ってた夏目漱石のこころを読み返していたんです。読み返しながら、先生に嫉妬していました」


嫉妬?

登場人物に?


宗旦狐はあたしの表情から読み取ったのか、恥ずかしげに笑った。


「俺も大概馬鹿ですね、登場人物に嫉妬なんて。ーーもう、深く関わらないと自分から決めてたはずなのに、ずっとあなたが忘れられなかった。……さなえには、申し訳ないと思います……でも、なるみさんでなければだめなんです。もし、あなたが俺のそばにいてくれると言うならーー俺と、結婚を前提に付き合ってくれませんか」


宗旦狐はあたしの両手を掴んだ。

相変わらずあったかい。


……あ、へんじ……しなきゃ。



「ふぁい」



あ、やべ、噛んで変な声出た。

うわ、宗旦狐、怪訝な顔してる。


「……ふぁい?」


「違う、間違えた!はい!御意!いえす!ーーちょっと驚き過ぎて噛んじゃったの!もっかい!もっかいやり直しさせて!」


「わかりました。じゃあ、寝起きのキスから…….」


「戻り過ぎぃ!!」



ーーあたしは、デブスだ。

愛想と可愛げは一欠片も持ち合わせてないし、口は悪いし性格も決してよくはない。


でも、宗旦狐が好きだ。

宗旦狐から離れたくないし、誰にも渡したくない。


ーーさなえさんも、そうだったのかな。


あたしは、さなえさんの代わりにはなれない。


でも、宗旦狐は前に言った。

あたしはあたしだから好きなんだって。

他の誰でもない、あたしであるから好きなんだって。


だから、どうか生きてる間だけは、宗旦狐といさせてほしい。


きっと、楽しく生きてみせるから。

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