月川クッキング
300
はあっ……はあっ……はあっ……。
疲れた。
あたしは息も絶え絶えに床に座り込む。
「すみませんでした」
「……知りません」
「いや、ほんと、悪かったと思ってます。耳まで、そんな、真っ赤にしなくても……純粋、なんですね……ぶっ」
近くにあったクッションを宗旦狐の顔面にぶつけてやった。
「悪いと思ってる人はそんな笑いこらえながら謝ったりしません」
「じゃあ、やり直します?」
「しません!」
なめやがって。
もう知らん!
あたしゃお腹空いたんじゃ!
「勝手に冷蔵庫漁りますからね」
あたしは立ち上がって台所に戻った。
「なにか作ってくれるんですか?ーーと言っても、そんなに食材買い込んでないですけど」
問答無用とあたしは冷蔵庫の扉を開ける。
……ほんとに、食材が必要最低限のものしかなかった。
いや、いつも中身ぎちぎちのあたしの家の冷蔵庫が異様なのか?
そんなことより朝ごはん。
卵にハム、チーズ……あと食パンがあればなあ。
と、食パンを求めて台所全体を見回す。
あ、オーブンの上に発見。
なんとかなりそう。
「ホットサンドが作れそうです」
「ホットサンド?」
「サンドイッチです。作っていいですか?」
「お願いします」
宗旦狐は、子どもみたいに目を輝かせた。
……そんなたいしたもんじゃないんだけどな。
まあ、いいか。
あたしは手を洗って調理を始めた。
まず、食パンをトースターの中に二枚入れて焼く。
その間にフライパンを熱して油をひき、卵を一つ割って目玉焼きを作る。
……あ。
「目玉焼き、半熟と固めどっちがいいですか?」
「半熟で」
「了解です……って、なに撮ってんですか」
なにしてんのかと思えば、宗旦狐はこっちに端末のカメラのレンズ向けてあたしが料理してるところを撮影してた。
「可愛らしい牛さんが料理してるところを撮ってます。シュールですよ」
「……チッ」
あたしは、宗旦狐を睨みつけて舌打ちしてやった。
目玉焼きの目玉、潰してやろうかな。
そう思いつつ、焼けた食パンにマーガリン塗ってその上にハム、チーズ、目玉焼きを乗せてマヨネーズをかける。
でもって、さらにもう一枚の食パンをその上に乗せて包丁で半分に切った。
「はい、できましたよ」
月川家では定番のホットサンド。
簡単だし早いし腹持ちいいから、是非お試しあれ。