呪い
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柳原先生がそんなこと言うもんだから、あたしは昨日の合コンのことを話さずにはいられなくなった。
自分がされたこと、自分がしたこと。
全部包み隠さず話し終わったら、柳原先生、にやにや笑いながらあたしのこと見る。
それから、少しだけ声を潜めてこんなことを言った。
「そりゃ呪いだよ、月川さん」
……のろい?
「月川さんは男たちへの怨恨を機動力として、意図的に行動したわけだろ。結果、狙い通り男たちは女の子たちからの信頼を失った。立派な呪いだね。君に呪術の心得があるとは知らなかった」
あれ、なんかあたし、勝手に呪術者にされてる。
「い、いやいやいや、だってあたし別に呪文とか唱えてないし」
「そもそも、言葉を発することは行動の一つだ。言霊信仰ではこの言葉にこもった力が、相手に影響を与えるとしてきた。だが、丑の刻参りだって、一種の呪いだ。あれに呪文なんかない。つまり、言葉は関係ない。強い怨恨がさせる行動が相手に災厄をもたらせば、それは立派な呪いだ」
柳原先生、嬉々として語る。
そして、トドメとばかりに更に声を潜めてこんなことまで言った。
「気をつけた方がいい。人を呪わばなんとやらっていうから」
人を呪わば穴、二つ。
待って、そしたらあたし四人に呪いかけたことになるから四×ニで八?
そんな穴開けられたら蜂の巣状態じゃ……。