察しろっつってんだろうがああああああああああ!
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ーー気づけば、あたしと宗旦狐はソファで互いに寄りかかりながら爆睡してた。
いつの間に寝たんだろう。
宗旦狐が泣いてて、あたしはその頭を撫でて……それ以降の記憶がまったくない。
二人して寝落ちしたんだな。
時間を確認しようと、近くのあたしの端末に手を伸ばす。
でも、充電は切れてて真っ暗な画面から少しも動かなかった。
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいて、鳥の鳴き声まで聞こえてくる。
壁掛け時計を視線で探すと、目の前の壁の上の方にあった。
午前八時五分。
随分寝たな。
隣の宗旦狐は、未だ熟睡してた。
あたしは宗旦狐を横にさせて立ち上がる。
うげえ、身体がばっきばき。
うんっと伸びをしてから、ベッドの布団を宗旦狐に掛けてやった。
そんでもって、昨日自分が使ったマグカップと食べたうどんの皿を洗う。
朝ごはんは、どうするんだろう。
勝手に冷蔵庫の中を拝見するのは、さすがに気が引けた。
「……なるみさん」
と、ふいに後方から名前を呼ばれて驚いた。
そういえば、いつから苗字からまた名前呼びになったんだろう。
近づいて、宗旦狐の顔を覗き込んだ。
「先生、おはようございます。あの、朝食を作ろうと思うんですけど、冷蔵庫の中身拝借してもいいですか?」
そう訊ねるも、宗旦狐は無反応だった。
とろんとした目であたしのことじっと見てる。
……こいつ、寝ぼけてやがるな。
「おーい。起きろー」
あたし、ぱたぱたと宗旦狐の顔の前で手を振った。
と、
「起きてます」
宗旦狐は突然あたしの手を掴んで、自分の方へ思いっきり引いた。
「ちょっ……ん!」
宗旦狐の顔が迫ってきたと思った瞬間。
あたしの唇と宗旦狐の唇が触れた。
……これは……いわゆる……接吻、というやつでは……?
理解が及ぶと、体温が急上昇した。
あたし、慌てて宗旦狐と距離を取ろうとする。
が、後ろ首掴まれてて動けん!!
ひぃぎゃやあああ!!口!!!取れちゃう!!!!溶けちゃう!!!!!
反射的に、空いてる手で宗旦狐の首を絞めた。
「ぐえっ」
「あ、ご、ごめ、あっ、あっ……!」
や、やばい、さっき、なにがどうなった!?
あたし、自分の口抑えてちゃんと口があるか確認する。
よかった、取れてない。
「キスして首絞められたの初めてです……」
と、宗旦狐は上半身を起こして苦笑した。
あたし、その両肩をガシッと掴んで思いっきり前後に振る。
「こちとらファーストキスじゃこのボケなすがあ!!!」
「……まじですか」
「その反応が一番傷つくんだよおおお!!!」
だから、察しろっつってんだろうがああああああああああ!