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い、一応、嫁入り前の娘、なんだが、なあ?

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今、なんつった?

お風呂?

え?もしかしてだけど、あたしを自分の家に泊まらせる気?

嘘でしょ、頭大丈夫?


「もう遅いですから、今日は泊まって行ってください。平塚まで送るより、その方が楽です」


宗旦狐はマグカップに粉末のお茶とポットのお湯を注いで、ソファの前の机に置いた。


「い、いやいやいやいや。自分の足で帰ります。そんな図々しいことしません。ご飯も一食抜いたくらいで死にませんから。それこそ、水道代と食費の無駄です」


なんなんだ、この人。

なんでこんなナチュラルに泊まらせようとしてんの?

誰にでもそうなのか?


「……じゃあ、帰る帰らないは、話の後で決めてください。とにかく、俺のせいであんな寒い中待たせたんですから、風邪は引かせたくないんです。どうぞ、これ飲んで待っててください」


そう言って、宗旦狐はあたしを片付けたソファに座らせると、お風呂を洗いに行ってしまう。


……まじか。


男の人の家で、お風呂に入る?

冷静に考えると、自然と体が強張った。


宗旦狐に限ってありえないだろうけど、なんだろうこの危機感。

きっと、あれだ。

雌としての本能みたいな。


い、一応、嫁入り前の娘、なんだが、なあ?


ガクブルしつつ、お茶を気休めに飲んでると、宗旦狐が戻ってきた。

そんなあたしを見て、


「寒いですか?」


とか聞いてきやがる。

いや、そうじゃない。

そうじゃないんだけど、そういうことにしておこうか。


宗旦狐は暖房の電源を入れた。


「着替え、用意しますね」


「あ、いえ、持ってるんで」


と、答えると、宗旦狐は明からさまに不審がった。


「ホテルに泊まるつもりだったんです!……前に、先生から好きじゃないって言われたとき、あのあと佐々木先生の研究室で大泣きしちゃって……また、ああなったら、家になんて帰れないから……」


これから嫌いだって言われようとしてるのに、我ながら情けねえ。


恥ずかしくて顔を上げられずにいると、ゴンっという音が聞こえてきた。


その音に顔を上げると、宗旦狐が部屋の壁に頭打ちつけてる。


「どうされました!?」


「いえ……ちょっと、ほっといてください」


家に連れてきといてほっといてくださいはないでしょうよ!?

ねえ!?

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