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……なんだって?

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落ち着いた頃。

あたしは「すみません」と謝って宗旦狐から離れた。


泣いたせいか、それとも抱き締められてたせいか、ずいぶん体があったまった。

でも今までずっと、旦那(抱き枕)に移った自分のぬくもりしか知らなかったから、他人のぬくもりって恥ずかしい。


「少し、話しませんか」


と、宗旦狐は言った。

街灯に照らされる顔は暗い。


「聞いてもらいたいことがあるんです」


「……わかりました」


ここじゃ寒いからということで、移動するために宗旦狐が近くに停めてた車に乗った。


宗旦狐は車のエンジンをかけるなり、暖房の設定温度を上げてくれる。


「俺の家でいいですか」


……え。


「なにもしませんから」


あ、いや。

えっと、別にそういうこと心配はしてない。

だって、誰もあたしみたいなデブス襲いたいとか思わないだろうし。


ただ、その、生物学上女であるデブスを、家にあげようと思う宗旦狐の神経がわかんない。


「へ、変な噂とか立ちませんか。あたしなんか家に呼んで」


昔、暇だからと思って吉田の家に遊びに行ったとき、吉田の男友だちも遊びに来てて、吉田があたしと仲よくしてるのをそいつに馬鹿にされてたのを見てから、誰かの家に行くことに拒否反応が出るようになったんだよね。


それ以来、花村の家くらいしか遊びに行ったことってない。


「噂ってなんですか」


「いや、近所の人とかに見られたら困ったりしないのかなって」


「他人の目とか、興味ないんで」


あ、そおですか。


「なら、あたしは大丈夫です」


その言葉を聞いて、宗旦狐は車を自分の家へと走らせた。



宗旦狐の家は、車で五分くらいの場所にあった。

どこにでもありそうなマンションの、地下駐車場に車を停めて、あたしは辺りを気にしながらこそこそと宗旦狐について歩いた。


どうやら、関西の大学からこっちの大学に移ってからは、このマンションで一人暮らししてるらしい。


宗旦狐は、三階の角部屋の前で止まって扉の鍵を開ける。


「どうぞ。散らかってますが」


「……お邪魔します」


一人暮らしにしては、結構な広さの玄関だった。


宗旦狐に続いて奥に行くと、二十畳はありそうな広い部屋が現れる。

この一室に、仕事用スペース、寝る用スペース、くつろぐ用スペースが詰め込まれてた。

各スペースごとに散らばってる本が気になるものの、それ以外は全体的に綺麗に整理されてる。


「夕食は食べましたか」


と、宗旦狐は二人がけのソファにまで積まれた本を片付けながら聞いてくる。


「そういえば、まだ」


「軽食でよければ用意しますから、先にお風呂どうぞ」


……なんだって?

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