表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/416

それは一体いつなんでしょうかねえ!?

285


次の日。


あたしは、一泊分の洋服が詰め込まれたバッグを持って出勤した。



宗旦狐はいつもどおり既読スルーだし、資料室は誰も来ないし、仕事もほとんどない。


まるで、宗旦狐に会う前に戻ったみたいだった。


……いや、戻ったんだ。

ただ、それだけのことなのに、なぜか漠然とした寂しさを覚えていた。


この資料室に、あとどれだけ来られるだろう。


ディスクに頬杖つきながら、そんなことを考える昼下がり。



と、端末に連絡が入った。

宗旦狐からだろうか。

そう思って慌てて端末を見るも、相手は吉田だった。



吉田悠介:先生の件、どうなった?



心配してくれてたのかな。

なにげに、こいつもなかなかいい奴なんだよな。



月川なるみ:もう、好きじゃないって言われたよ。


吉田悠介:お前は好きだったんじゃないの?


月川なるみ:さあ、わかんない。


吉田悠介:それでいいのか。


月川なるみ:それが先生の本心なら、仕方ないじゃん。



送ってから、ふと思い立って吉田に聞いてみた。



月川なるみ:聞きたいんだけどさ、吉田は彼女のこと好きになれて幸せ?



あたしは人を好きになったことがないから、好きになることがどんなことなのか、周りの人の反応とかを見て想像することしかできない。

参考までに、彼女を好きになって、プロポーズまでして婚約した吉田の気持ちが知りたかった。


父は、好きになることはエゴだって言った。

その人と一緒にいられるなら、他人や、自分さえ傷つくことを厭わない。

それが、好きになることなんだって。


でも、それって果たして幸せなのか?

そんな、他人を傷つけたり、自分自身が傷ついてまでその人を好きになる利点が、どこにあるんだろう?

あたしには、それがわからなかった。



吉田悠介:幸せだよ。



吉田は、即座にそう送ってきた。



吉田悠介:これから、苦労もたくさんあるかもしんないけど、それとかも含めて、全部が幸せなんだと思う。



全部が幸せ、か。

つまり、その人がいればどんな苦労も幸せのうちになると。

やっぱり、あたしにはわからんな。



月川なるみ:よくわからないけど、吉田が幸せならよかったよ。


吉田悠介:まあ、いいことばっかじゃないけどな。でも、それが人を好きになるってことだ。お前にもいつかわかるだろうよ。



出た。

いつかわかるだろう発言。


それは一体いつなんでしょうかねえ!?

あたし、むくれながら返信する。



月川なるみ:あんがとよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ