万年反抗期のあたしには絶対なれん
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「お兄ちゃん、なにかあったんですか」
「うふふ、美月ちゃんも気になるー?」
桜花さん、にこにこと笑顔を振りまく。
美月ちゃん、心底気に食わないというような顔でその桜花さんを睨みあげた。
「もったいぶってないで、さっさと教えて!」
美月ちゃん、桜花さんに対して随分と敵対心燃やしてらっしゃる。
「せっかちねえ。ところで、なるみんはなあんにも兄貴から聞いてないのよね?」
「はい。なにも」
「そう。じゃあ、始めから話すわね」
そう前置きして、桜花さんは語り出した。
「兄貴、うちのパパとママと凄く仲悪いのよ。それで、大学は関西の方に行っちゃったし、就職も向こうでしちゃって、わたしももう数十年と会ってなかったのよね」
確かに、前に宗旦狐は家を出たかったから関西の大学に行ったって言ってた。
それに、今思えば宗旦狐が桜花さんの話するとき、(多分)がついてたのは、弟の桜花さんと何十年も会ってなくて現状がわかってなかったからなのかもしれない。
「連絡先は知ってたから、パパとママには内緒で、わたしは兄貴とやりとりしてたんだけどね」
「なにが理由で、仲が悪くなったの?」
幼い頃から一緒にいた美月ちゃんさえも、宗旦狐のことはあんまり知らないらしかった。
「いろいろ理由はあんのよ。うちの家ってちょっと特殊でね。親の言うことは絶対みたいなところがあったの。それが兄貴は気に入らなかったみたいね」
つまり、反抗期のまま大人になった感じ?
「昔はなんでもよく聞くザ・いい子だったんだけどね。なんか、突然吹っ切れた感じ?わたしは人形みたいな兄貴より、その吹っ切れた兄貴の方が好きだったから、影ながら応援してたんだけど」
人形ね。
万年反抗期のあたしには絶対なれん。
「でも、最近、また人形になっちゃってんのよねえ」
桜花さんは頰に手を当てて息をついた。