なんだこのカオス
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「お兄ちゃんの……弟……?」
美月ちゃん、もう声が震えちゃってる。
「改めまして、朝倉天真よ。天に真実の真で、テンマね。でも、この名前可愛くないから、桜花って呼んで」
ソウタツにテンマって、今時変わったネーミングセンスをしてらっしゃるな。
なんか、お坊さんの名前みたい。
「じゃあ、桜花さんとお呼びします」
「わたしは、なるみんって呼んでいい?」
「いやです」
「釣れないわねえ、なるみん」
桜花さん、唇突き出して拗ねたような顔する。
もう呼んでんじゃねえかよ。
「そんな釣れない態度とっていいのかしら?北方誠司さんの実家の住所調べてあげたの、わたしなのに」
……なんだって?
「袴だって、わたしが店のツテで用意したんだから。それが所々焦げてボロボロになって返ってきたときは、さすがに殺意が芽生えたけど。でも結果的にそのおかげでなるみんは無事だったわけだからね。人命には代えられないわ」
と、桜花さんは眩しい笑顔であたしの頭を撫でた。
その手を、美月ちゃんが払う。
「なるみさんに気安く触んないで」
「もしかして、美月ちゃんはわたしのこと男として見てるのかしら?わたし、心は乙女だから安心していいわよ?」
この人のキャラが濃過ぎて頭がついていかない。
桜花さんは「可愛いー」とか言いながら美月ちゃんの頰をつんつんしてるし、美月ちゃんは猫みたいに威嚇してる。
なんだこれ。
なんだこのカオス。