………うわあ、えげつねえ。
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あたしと美月ちゃん、桜花さんのことをしばらく無言で見つめた。
フリルブラウスに、黒のタイトスカート。
そのスカートからは、黒ストッキングに包まれたすらりと長い足が伸びてる。
靴はレッドソールのブランド物で、鞄もヴィトン。
でもって、化粧のせいかお顔立ちも派手。
真っ赤なルージュが印象的だった。
とにかく、ものすっごい美人。
「これ、名刺ね。いつでも遊びにきて」
と、名刺渡すために桜花さんがあたしに近寄る。
その瞬間、辺り一面がお花畑になった。
臭いわけじゃない。
ほんとに、相手に印象づけるようなお花の香り。
めっちゃええ匂い。
名刺確認すると、『和風ガールズBAR 花鳥風月』とか書いてある。
しかも、この人店長だ。
「もお、佐々木先生が強引に来いって言うから、お店休んできたのよお。あの人、わたしがそういうの好きって知っててやってるの。ほんと、たち悪いわあ」
……大旦那に対する信頼が揺らいできた。
「美月、なんか呼吸しづらい」
と、美月ちゃんが胸を手で押さえて苦しそうにこう言う。
まあ、自分の父親がガールズバーの店長とお知り合いって、結構ショックだろうな。
しかも、こんな美人と。
「あらあ、もしかしてあなた佐々木先生のお嬢さん?やあだあ、ちょーかわいー!うちで雇いたいくらあい」
桜花さん、顔面蒼白の美月ちゃんをぎゅうと抱き締める。
必然的に桜花さんの胸の物が美月ちゃんの顔を圧迫させて、美月ちゃんはもがき苦しんでた。
……うわあ、えげつねえ。