ぼんっきゅっぼんっのくっそ美人
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「あのお兄ちゃんが?それ、本当にお兄ちゃんだったんですか?なるみさんの妄想じゃなくって?」
「妄想に泣かされるとか、あたし相当やばくない?」
それもう、病院に行くレベルだわ。
「へえ……パパの言ってたこと、そんなに外れてなかったんだ。美月と兄貴、信じられなくて『子どもとの話題に困ったからってそんな嘘最低』とか、『もう少しマシな嘘考えろよ』って適当にあしらっちゃいました」
大旦那の扱い酷すぎて笑えてくる。
日頃の行いが悪いんだな。
「でも、なるみさん、やっぱりお兄ちゃんのこと好きだったんですね」
はい?
なんで急にそうなった?
「まさか、まだ否定するんですか!?」
「え?だって、え?なんでそうなんの?」
「なるみさん、もうここまでくるとイラつきますよ」
えええええ。
そんなこと言われたって、わかんねえもんはわかんねえよ。
「なるみさんが泣いたのは、お兄ちゃんから好きじゃないって言われたからでしょ?つまり、お兄ちゃんから嫌われたくないって思ってることじゃないですか!」
「いや、でも朝倉先生じゃなくても、嫌われたくはないでしょ?あたし、大旦那とか柳原先生から嫌いって言われても泣く自信あるよ?」
もう、あの二人に嫌われたら多分一生立ち直れないよ。
「ちっがーう!!もう!!パパとおじちゃんの好きとお兄ちゃんに対する好きはぜんっぜん別物なのー!」
美月ちゃん、髪の毛かきむしりながら叫ぶ。
別物?
そういえば、柳原先生も文化祭の日にそんなこと言ってた。
「美月先生、どこがどう違うのか教えてもらえませんか」
あたし、姿勢を正して美月ちゃんに向き直る。
と、
「それは自分で気づかなきゃわかんないわよお」
資料室の扉の隙間から声が聞こえてくる。
えっと、聞き覚えない声なんだけど。
美月ちゃんも、聞き覚えないがないらしい。
鋭い眼差しで扉の方見てる。
おいおい、元ヤンオーラ出ちゃってるよ。
「あの……」
と、あたしが恐る恐る声をかけると、ばんっと扉が開く。
姿を現したのは、ぼんっきゅっぼんっのくっそ美人だった。
え?峰◯二子??リアル峰不◯子なの???
「初めまして。わたし、佐々木先生から呼ばれた桜花っていいます。よろしくねえ」
語尾にハートマークでも付きそうな、甘ったるい口調だった。