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落ち着いてください
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非常勤講師の人数分印刷された来月分の資料室の予定表を胸に、あたしは非常勤講師控え室に向かう。
柳原先生は、多分あたしが資料室スタッフになったことを知らない。
アポも取ってないから、驚くだろうなあ。
「失礼します」
ノックして、声をかけてから控え室の扉を開く。
四限に授業があるはずのーー時間割表にて調査済みーー柳原先生は、やっぱりもう来てた。
少し遅めの昼食中らしい。
サンドイッチ頬張ったまま、あたしを見て目を丸くしてる。
「柳原先生、お久しぶりです。あたしのこと覚えてますか?」
「もちろんもちろん。月川さんは、忘れたくとも忘れられないよ」
どういう意味だろう。
ちょっとわかんないや。
「今日はどうした?遊びにきたの?」
「ううん、あたし、実は先生の授業もっと受けたくて、自主的に留年したんです」
嘘だけど。
そう告白する前に、柳原先生盛大にむせこむ。
「おまっ、あんだけ苦労して卒業制作提出したのに!?ばかなのか!?」
「落ち着いてください。嘘ですから。ちゃんと卒業しましたから」
ここまで焦られると思ってなくて逆にこっちが焦る。